小説2 拍手(2009.2月) 《2/14の予定》 退屈な授業をさぼり、暖かい室温の保健室のベッドの上で、暇潰しに雑誌を眺める。 平和で、退屈な時間。 「うおっ!マジかよっっ!!」 破られる、静寂。 (うるせーな!) ベッドの仕切りカーテンの向こうで騒いでいるのは、保健室の主のシャマル。 五月蠅いと思いながら、普段へらへらとしたシャマルが、何にそんなに驚いているのか興味がわいて、ベッドを降りる。 「何、騒いでんだよ?」 「これを見ろ!」 目の前に突き付けられた紙には《並盛中学校・2月の月間スケジュール》と、印刷されている。 (……?) 「で?」 ざっと内容に目を通しても、驚く様な内容は無い。 「良く見ろ!ここだっっ!!」 びしっと、節張った指が指す場所―――2月14(土)空欄―――を見るが、やっぱりわからない。 土曜日だから、学校は休み。 空欄なのも、何の問題も無い。 学校が休みなんだから、予定なんか有る訳無いんだから。 「だから、何なんだよ?」 首を傾げる。 「この日が、何の日か忘れたのか?」 (2月14日……何の日だ?) 記憶を辿る。 2月……3日に、《ボンゴレ式・節分大会》をやるってリボーンさんが言ってた。 (楽しみだな、うん) 10代目と、季節のイベントをご一緒出来るんだから。 あとは……そういえば、9日はシャマルの誕生日だ。 一応、何かプレゼントするか? (何が良いんだろ?) 「隼人……」 「あ?……あー、14日な。何の日だ?」 さっぱり思い出せず、うっかり違う事に意識が移っていた。 「お前、ボンゴレ坊主の事考えてただろ!」 (良くわかったな!?) いや、それだけじゃ無かったけど…… 「は〜〜。いいか、14日はな!」 大袈裟に溜め息を吐くのがうざいが、続く言葉を待つ。 「バレンタインデーだ!!」 (………) 「はあ!?」 「いいか!日本のバレンタインデーは、女の子から好きな男にチョコレートをプレゼントする日だ。愛の告白は勿論、色んな好きがチョコレートという形になるんだ!!」 『そんな日が休みだなんてっっ』 (………っくだらねー) 「そんな事かよ」 「『そんな事』じゃ、済まされ無いんだよ!」 (いや、もう聞く気無いから) 熱弁をふるうシャマルを残して、さっさとベッドに戻る。 くだらない内容で、延々と嘆きの声が聞こえるのが、マジでうざい。 (バレンタインデーか…) 女がプレゼントする日。 女からの、好きという気持ちが形になる日。 (イタリアのとは、違うんだな) 日頃から、女共に声をかけるシャマル。 そんな意味の有る日なら……きっと、いつも以上に女共に声をかけるんだろう。 (平日じゃなくて、良かったかも) 女共に声をかける姿なんて、見慣れてはいる。 だけど、面白くは無い訳で…… そんな姿を見なくて済むなら…… (土曜日で良かった) 土曜日は、1日家に居ようか? そうしたら、嫌な思いをしなくて済む。 《2月14日》 どうやって、外出を阻止するかを考える。 END [*前へ][次へ#] |