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black game
番人
時刻は22時、EDEN本部。

「どういう…ことですか?京さん」
問うたのは、瀧澤和都だった。
眼前の男、種田京に掴みかからん気迫だ。
「どうもこうも、言ったとおりだ。eve班の柘君宗矢が捕まった」
「どうして!?なんであいつが!?悪い冗談を言わないで下さい!班長!」
周囲の声など気にならない程に、和都は動揺していた。
種田は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて、ただ和都を見ている。
そこに、一人の声が響いた。

「まるで餓鬼だな」

振り返るとそこには大きめの荷物を肩に下げた一人の青年がいた。
銀髪に、蒼い瞳。整った顔立ちをしている。
コツリコツリと音を立てながら黒ブーツが歩を進める。
彼は、見たことのない若い青年だった。
「みんな聞いて下さい。彼がこれからEDENのリーダーになる方です。名前は」
「杜杵築時雨だ」
eve班の班長、泉和詩の紹介を遮って彼は言った。
真っ直ぐな瞳は何一つ、映してはいなかった。
その目を見た瞬間、和都は背筋にえもいえぬ感覚を覚えた。
「これからしばらく…世話になる」
ぺこりと頭を下げた彼、杜杵築時雨はそのままコツリと足音を鳴らして、両班の班長に向き直った。
「それと、柘君が此方の情報を喋った…これから二人は命と情報を狙われるから、何事にも気を抜くな」
「「了解」」
時雨の言葉に場の空気が濁る。
ざわつく中、和都の心中は穏やかではなかった。
「お前、なんなんだよ!アイツが情報を喋った?そんなことあるはずないだろ!?いい加減に、」
「盗聴記録でも見たら納得するのか?いい加減にするのはお前の方だ。感情と私情を仕事に持ち込むな」
冷めた瞳で和都を見つめたまま言い切ると、時雨はどん、と和都の胸に紙を三枚ほど押し付けた。
「真実は全てそこにある。柘君を信頼するなら見ることだな」
不敵な笑みを浮かべて、時雨は言った。
そしてすぐ踵をかえして、防弾ガラスの自動ドアから外へと出て行った。



真実とはいつも、そこにあるわけではない。

─「序章」・終


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