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夜の都を歩くのも久しぶりだ。

「虫ほどの大きさだったらどうしよう」

見つけるのに苦労しそうだ。せめて小動物程度の大きさは欲しいところだ。

「それにしても」

事情を聞いた昌浩の反応が面白かった。慌てて自分も行くと言ってきたが、それは断った。

「休める時位は、休んでおけばいいのに」
『確かにな』

安倍の屋敷で過ごすようになってから勾陣に聞いたのだが、中々に波乱な人生を送っているらしい。

「休んでくださいとは言って来たけど、大丈夫かな?」
『騰蛇もいるし、彰子もいるからな』
「大人しくしているのも飽きてきたし、私的には外に出る大義名分ができて万々歳なんだけどなぁ」
『お前な……』

飽きれられたかなと顔を伺えば、予想に反して勾陣は笑みを浮かべていた。

『その位の方が、晴明の血を引くものらしいな』
「それって素直に喜んでいいのか迷うんですけど」

あんなに飄々としてないし、たぬきでもない。たぶんだが。

『噂をすればだな……』
「えっ」

まさかまた出てきたのかと勾陣の視線を辿れば、予想に反して闇夜をたったかと駆けてくる白い影がそこにはあった。

「と、騰蛇様?」
「ん? なんだ、どうした?」
『気にするな』

すっかり騙された。話の流れ的に晴明だと思ったのがいけなかった。

『昌浩の所にいなくていいのか?』
「気になると言って落ち着かなくてな。俺に見て来いとさ」
『なるほどな』

なんとも昌浩らしい。

「佐竹の所へ向かっているのか?」
「その前に行きたい所がありまして」

妖の方は晴明も占を行ってくれているし、式に探索をさせている。

「今回の件に必要なのか?」
「むだ足になる可能性もありますけど」

手がかりがなくても役に立つだろう。
きっと……。
たぶん。
少々の不安を覚えた所で、闇夜に人影が浮かんだ。


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