9 『毒蟲編〜後編〜』 「と言う感じでした」 あの後、佐竹の屋敷をさっさと退出して、報告のために一度安倍邸へ戻った。……のが間違いだったかもしれない。 「そうか、そうか。力を使ってのう」 状況を説明する際に、以前の一件も話す必要性が出てきてしまった。 もう、それはそれは、予想通りの反応だった。こんなことになるなら、前回の時に腹を括って報告しておくべきだったと後悔する程に。 「なんとも嘆かわしいことじゃ。なんの力もないものを脅すなどと」 「……それに関してはすみませんでした」 全容を知りながら言ってくる辺りが、なんとも祖父らしい。 「時間的な事もありますし。今回は見なかったことにしてください」 「まぁ、誰が困るわけでもないしの」 残念な事に、二人の中では佐竹本人は頭数に入っていない。 「問題はその妖か」 「はい。虫刺されのような跡から妖気は感じましたが……」 周囲を念入りに調べたが、これと言った手がかりは見つからなかった。 妖の仕業であること告げた時の佐竹のことを思い出すと、何とも腹立たしくなる。 やはりあの時の恐ろしいばけものの仕業だと、自分を棚に上げて言ってきたのだから救えない。 「これ、聞く姿勢をとらんか」 「あ、すみません」 意外と根に持っているらしい。すっかり目が据わっていた。 今の注意は自分に責任があるので素直に謝り、しっかりと聞く姿勢を整える。 「目星はついておらぬが、こちらでも調べてみよう」 「お願いします」 自分の勘は信じる要素が少ないのだが、晴明の占は信頼できる。 出来ないことは出来る人にやってもらい、自分は出来る事をやればいい。 [*前へ][次へ#] [戻る] |