4 「あ、転がっている奴らを持って行って貰えばよかった」 このまま地面で寝たら風邪をひいてしまうのではないだろうか。 原因を作った本人が言うべき事ではないのだが。 「まぁ、いいか。自業自得なわけだし……」 神剣を一降りすると、淡い光を放ちながら瞬く間に手から消えていく。 帯びることも可能だが、帯刀していると少々目立ってしまう。 印を組めばどこにでも出せ、使わなくなったらしまえるというのは案外楽だ。 「さて、帰ろうかな……」 周囲に危険はなさそうだし、騒ぎを聞き付けた者達がやって来ても面倒だ。 なにせ自分には、名乗れる身分はないようなものなのだから。 もと来た道を戻ろうと踵を返した所で、控え目な声に呼び止められた。 声のした方を見れば、先ほど庇った牛引きが深々と頭を下げているではないか。 「先程はお助けいただきましてありがとうございました。主人様がお礼を申したいと申しております」 一瞬、断ろうと思ったが、断れば牛引きが主人とやらに咎められるのではないのだろうか。 それはそれで気分が悪い。 牛引きに頷いて見せ、ゆっくりと牛車へと近づいて行った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |