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「うわぁ! すごいね」
「……空を飛んでる」

式の背に掴まる兄妹は、目一杯見開いた瞳を、輝かせている。
二人が落ちないように後ろから押さえてあげながら、笑みを深くした。

「こんなに喜んで貰えたのは、久しぶりだな」

基本的に自分の移動にしか使わないし、この位の子供と接する機会も少ない。
自分的には、小さな子供と共にいるのは好きなのだが、如何せん環境が悪い。

「傲越も可愛げがないし、なにより師匠に子供が似合わないから仕方ないけど」

この二人に求める事が既に無駄な気もする。

太一や葉子の事を考え、いつもより心持ちゆっくりと下降すると、庭先に式を留め急いで屋敷の中へと戻った。
一枚布の中に調剤の道具を包み、それを籠に入れる。
念のために部屋の隅にある唐櫃の中から神農本草経を引っ張り出すとそれも籠の中へと入れる。

「お兄ちゃん、まだ行かないのー?」
「今行くよ」

再び式の背に乗ると、鴨川へと進路をとる。あまり高く飛ばないように、速度を上げすぎないように。

「お兄ちゃん、それなぁに?」
「これかい? 大事な道具が入っているんだよ」

陰陽師として生きる事を捨てた自分が、代わりに学んだ術の全てが。



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あきゅろす。
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