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「なんだ? 騒がしいな」
「揉め事みたいだね」
「道を変えるぞ。面倒だ」
「そう言うなよ」
わしゃわしゃと頭を撫で回してご機嫌をとると、人の流れに乗って騒ぎの中心へと近づいていく。
既に人だかりが出来ており、言い争う声が聴こえてくる。
「お願いだよ!」
「何度言われたって無理だ。金のない奴には売れんな」
「お金はがんばってよういします。だから、お薬をください」
小さな女の子と少年が、体躯のよい店主に必死に頭を下げている。
周りからは野次にも似た声が飛び交っており、一触即発の雰囲気だ。
もちろん、この時点で首を突っ込むことは決定済みだ。
あの位の子供が困っているのを見過ごせる程、器用な人間ではない自覚はある。
「だから嫌なんだよ」
「はいはい」
とりあえず事態を把握するべく、近くにいた人当たりの良さそうな老婆に声をかける。
「あの、どうかしたのですか?」
「あぁ、昭一さんのとこだよ。ここ毎日いつものようにああなんだよ」
老婆曰く、あの少年と女の子は兄妹なのだそうだ。貧しい家の子で、本来ならこのような市に来たりはしない、その日暮らしがやっとのような。
そんな時、父親が重い病に臥してしまった。本来なら薬があればよくなる病なのだが。
老婆の話を一通り聞き終えた頃、騒ぎの中心で一際大きな声が上がった。
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