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「で、どこ行くんだ?」
「ん〜? あっちかな? あ、でもこっちかも」
「はっきりしろ!」

こうしていると思うのだが、傲越の声が徒人にも聞こえたりしたら、だいぶ精神衛生上よくないのではないだろうか。

「その前に、姿を見ただけでも大変な事になりそう」

見た目は山犬や狼に似ているにしても、三房の尾や鋭い牙なんかを見たら、妖怪でしかない。

「何か文句がありそうだな」
「いや、別に」
「まぁ、いいけどよ。本気でどこに向かってんだ? たしかこの先は市だろ」
「三条の市か」
「買い物とか言ったら、一瞬で消してやる」
「流石にそんな冗談は言わないよ」

身の危険もあることだし。

「ずっと呼んでる気がするんだ。よく聴こえないけど」

音としては聴こえないが、魂に響く感覚がある。

「なら、呼んでんだろ。お前のそのよくわかんねぇ能力は、外れた事がないからな」
「……よくわからなくて悪かったな」

幼い頃から時々あったのだ。誰かに呼ばれている気がすることが。

「あの頃は水面の世界でしか聴こえなかったけど。これは仮にも血を引いているからなのかな……」

陰陽師には声なき声を感じる事の出来る術がある。
力のあるものなら夢や直感で、そういった類のものを察知することが出来るのだ。

「安心しろ。お前には才能はないぞ」
「そうですね。とにかく、三条の市の中を歩いてみよう。たぶんここにいるんだ」

何かしらの理由で『だれか』を呼んでいる誰かが。



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あきゅろす。
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