6 真子姫の手が震えていた事は、自分も気づいたのだから、勾陣も気付いているだろう。 このような場で舞を舞うことに対する緊張からか……。そう考えれば不自然ではない。 不自然ではないのだが、どうしても引っ掛かる。 「如何かなされまして?」 「いえ……」 急に黙ってしまった事を訝しった真子は、艶やかな髪を揺らして首を傾げている。 表情だけを見れば、やはり不自然などはないのだが。 その手は未だ、小刻みに震えているのだ。 真意を測るべく、真子の黒い瞳を見つめる。自分の右目は時として、人の奥深くをも見抜く事ができるのだ。 無言で見つめられた真子は、居心地の悪さを感じてその身を引く。 その瞬間、真子の瞳が不安に揺れた。 「真子姫様?」 何気ない問い掛けに、真子の肩が跳ね上がる。 彼女の衣装を見渡せば、あってはならない皺が寄っているではないか。 まさかという想いが、自身の内側を駆け上がる。 『これは……!』 勾陳の驚いた声と、何かが倒れる音は、ほほ同時に耳に届いた。 「しまった……」 室内に広がる光景に、思わず息を呑む。 つい先程まで談笑していた姫たちは、一様にしてその身を横たえている。室内で身体を起こしているのは、自分と真子の二人だけ。 「なんという……」 己の失態に毒づきたいのを堪えて、近くにいた姫の口元に手をあてる。 規則正しく息をしている。命がどうという問題ではなく、単に眠っているのだろう。呪詛の様な類であれば、自分の瞳がそれを捉えるだろうし、先に貼った符がそれを阻んでいるはずだ。 「真子姫、あなたですね?」 [*前へ][次へ#] [戻る] |