10 結局、押し切られる形で、護衛の件を引き受けてしまった。 爆弾発言と共に。 東三条殿を出てから何度めかのため息が自然と漏れる。 「そんなに嫌ならば、断っても良かったのじゃぞ」 「途中から面白がって道長様の側にお回りになりましたね」 最初は道長に諦めてもらおうと口添えをしてくれていたのだが、道長の爆弾発言の後、その立場を一変させたのだ。 結局、二対一の劣勢に立たされてしまい、渋々引き受けるはめになってしまった。 その時見せた傲越の呆れた顔が憎たらしい。 『それにしても、晴明様。お止めした方がよろしかったのではないですか?』 「ん? まさか女装癖があるとは思わなかったしのう」 「……やめてください」 晴明の言葉にがっくりと首を傾ける。 そうなのだ。 だだの護衛ではなく、女性の格好をして、舞を踊る姫たちの側で控えていなければならないのだ。 確かにそんなことは道長に仕えている者には任せにくいだろう。 あぁ、それにしても。 女顔ではないつもりなのだが。 『晴明、あまりいじめるな』 勾陣や太裳が味方してくれているが、最早後戻り出来ない。 「すまんが頼むぞ」 「……わかりました」 晴明には世話になっている自覚がある。 割り切れない想いを奥に押し込めて、再び大きく息をついた。 [*前へ] [戻る] |