小説
5
「はぁ...」
なんか最近ため息ばっかついてる気がする
幸せが逃げる?そんなの知るか。もう遅い
生徒会室を出た瞬間に涙が出た
まだ廊下だと、しっかりしろと自分に言い聞かせても止まらなかった
放課後だからか、学校に人がいなかったのが幸いだが細心の注意を払いながら寮へと急ぐ
涙は止まらなかったので、しゃくり上げそうな声を必死に自分の息と一緒に飲み込む
そういえば昔から親に怒られるとこうやって泣いていたな と思い出した
父がそれはそれは厳しい人で、泣くことは絶対に許されなかった
"お前はいずれ俺の会社のトップになるんだ。こんなことで泣くとは何事だ。弱みを見せるな。完璧であれ。お前は出来損ないだから他の誰よりも努力しないと見捨てられるぞ。"
何回この言葉を突きつけられた?
出来損ないだって?そんなの分かってるさ
母親がいたらまた何か違っていただろうか
母親は俺を産んですぐに亡くなったそうだ
写真もろくに無いせいで、俺は遺影の中の母親しか知らない
ちなみに写真は父が全て燃やした
俺は人に甘えることが出来ない 甘え方を知らない
毎日部屋で嗚咽を飲み込んで生きてきた
あの言葉は 俺のことを想って言ってくれていたのか。それともただの罵倒か
父が何を考えているのかが分からない
まぁきっと後者なんだろうけど
幼い頃はただただ不安で、父にバレないように泣くことしか出来なかった
今はもう何も考えない様にしている
諦めている、と言った方が正しいか
父を理解するのを諦めたんだ
そうやっていつも嫌なことから逃げ回って、諦め癖がついてしまった
そして今回も、そう
相良に嫌われているのは最初から分かっていたんだ
ただ今まで以上に嫌われただけだ
もう 話してくれないかもしれない
俺を見る度に冷たい瞳で睨まれるかもしれない
想像の中の相良はいつだって優しかった
現実では俺に向けられることはないけど、暖かい瞳だった
でも、想像の中でさえも その瞳は冷たくなる
きっとそれは、出来損ないだって言われているようで
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