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長編小説
1.建物の陰で
会社を出た基樹は、最寄り駅で電車待ちの間に、自販機で缶コーヒーを買った。
コーヒーには利尿効果がある。
そのことを、基樹はよく知っていた。
その上で、あえてコーヒーを飲んでいる。

電車がホームに入って来て、それが普通電車だったので基樹は乗り込み、空いている座席に腰を下ろした。

一人身なので急いで帰る必要はなく、仕事帰りはたいてい普通電車にのんびり座って帰るのがほとんどだ。

ここでのポイントは、ゆっくりだということ。
座れることはもちろん、家の最寄り駅にたどり着くのも遅くなる。
その分、電車に乗る前に飲んだ缶コーヒーが効果を発揮してくれるのだ。

音楽を聴きながら電車に揺られ、ようやく降りる駅にたどり着いた時。
いつものように基樹は尿意を催していた。

しかし、駅のトイレには行かずに、そのまま改札を出た。
しっかりした足取りで、駅前の繁華街を通り抜け、団地の中を通り抜ける。

すでに辺りは暗くなっているせいで、人影はあまりない。
そして、団地の中には様々な建物があった。

基樹は迷わず、その建物の一つである、こじんまりした公民館に向かった。

二階建てくらいの高さしかないそこの周囲には、特に人影が少ない。
そこで基樹は、パンパンに膨らみ始めた膀胱をなだめつつ、ズボンから性器を取り出した。

陰になっているとはいえ、道路でもあるそこは、いつ人が通るかもわからない。
そんな場所で、基樹は性器を取り出し、壁に向かって放尿を始めた。

シャアアァァァァ――ッ

軽やかな水音が耳に心地いい。
綺麗に放物線を描いた小便は、壁にビシャビシャと当たって地面に流れ、そこに水たまりを作った。

それを眺めて満足した基樹は、軽く性器を振り、ズボンの中へとおさめる。

さあ、明日はどうやって小便をしようか。

ゴミ箱とかも、面白いかも知れない。
基樹はくすりと笑いながら、家路へと着いた。



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