長編小説
2-6.電車の連結部で
残業があって遅くなると言ったのに、力哉は好都合だと言って、会社の近くにある喫茶店を待ち合わせ場所に指定して来た。
急いだものの基樹が残業を終えた時には、すでに夜の10時を回っていて、高校生が気軽に出歩いていい時間ではない。
慌てて喫茶店に入ると、力哉はコーヒーを飲みながら音楽を聞いているようだった。
その表情が今まで見たことのないもので、思わず基樹はまじまじと力哉を見つめてしまった。
その視線に気づいたのか、こちらを見た力哉の表情がいつも通りにやりと笑う。
その表情にちょっと安心して、基樹は足早に力哉が待つテーブルへと向かった。
「何か頼む?」
「それより、時間は?大丈夫なのか?」
「このくらい、たいしたことない」
そう言って、力哉は自分の分のサンドイッチを注文し、コーヒーをお替りした。
それを聞きながら、基樹も同じものを注文する。
しばらくして運ばれてきたサンドイッチを無言で頬張り、その後、コーヒーで喉を潤した。
その間、会話らしい会話は一切なかったが、それでも居心地の悪さは感じない。
頃合いを見計らって、力哉が立ち上がる。
それに続いて立ち上がりながら、基樹は伝票をつかんでレジに向かった。
「どこに行くんだ?」
「電車」
力哉の言葉は簡潔で、しかし、それを聞くと基樹の鼓動は跳ね上がる。
今日はどんな風に放尿させられるのだろう、と考えれば考えるほど、頬は紅潮し、心臓は高鳴った。
力哉に先導されるようにして最寄り駅に向かい、各駅停車の電車に乗り込む。
終電間際のせいか、乗客はほとんどいない。
とはいえ全然いないというわけではなく、各車両に1人、2人はいた。
「ここ、ちょうどいいんじゃない?」
走り出した電車の車両を渡り歩いて、力哉が目星をつけたのは連結部だ。
人が1人、ようやく立てるくらいの隙間で、ドアは腰の辺りまでガラス張りになっている。
「こ、これ、見えるんじゃ…」
連結部のドアに近づいた基樹は、ビクビクしながら力哉を振り返った。
しかし、力哉はニヤニヤとした笑みを顔に貼りつけたまま、先を促すように顎をしゃくってみせる。
基樹はためらいながらも、連結部へと向かった。
ドアを開いてその中へと身を滑り込ませ、ドアを閉じる。
力哉との間をドアで隔てる形となったが、さすがに2人も立てる場所ではない。
それは力哉もわかっているようで、ガラス張りのドアから、基樹の下肢を覗き込むように見ていた。
ドクドクと心臓を高鳴らせながらも、基樹の尿意はみるみる膨らんでいく。
最近、力哉に見られていると思うだけで、条件反射のように尿意が膨らんでしまうことが多い。
周囲に視線を走らせ、隣の車両にいる人がこちらを見ていないのを確認して、基樹は素早く性器を取り出した。
ちらりと力哉を盗み見ながら、シャアッと放尿を始める。
蛇腹状の連結部に、ジョボジョボと音を立てながら小便が降りかかる。
それを見ていると、じょじょに興奮していった。
が、そんな基樹の興奮に水を差すように、突然力哉との間を隔てていたドアが開き、間近に力哉が覗き込んで来る。
力哉の手には、しっかりと携帯電話が握られていた。
「な、何で……ッ」
慌てて力哉の背後へ目を向けたが、そこにいた乗客はぐっすりと眠り込んでいるようだった。
ほっとしたものの、安心はできない。
力哉は面白そうに基樹の放尿を覗き込みながら撮影し、基樹は、今更止めるわけにもいかず、恥ずかしさに頬を染めながら放尿を続けた。
恥ずかしさに身を竦めながらも、基樹の性器はゆるゆると勃起し始める。
放尿を終えた頃には完全に勃起してしまい、性器を下着の中へしまうことができず、基樹は困ったように力哉を見つめた。
力哉は、面白そうに笑い、素早く携帯電話をしまった。
それから、性器をむき出しにしたままの基樹の腕を引き、ちょうど停車した駅のホームへと降り立つ。
そこはほどんど人気がなく、駅員でさえホームにはいなかった。
それを幸いとして、自販機の陰で力哉の手が性急に本基樹を追いつめ、あっという間に吐精してしまう。
力哉の手を精液で汚してしまった罪悪感から、基樹は慌てて自分のハンカチを取り出し、その手を綺麗に拭いた。
しかし、力哉は面白そうにそんな基樹を見下ろしている。
「アンタさ、今度家の中でゆっくりヤろうぜ。もっと面白いモン、見れそうだし」
そう言って楽しそうに笑う力哉に、どくん、と心臓が高鳴る。
誰かに見られたい、という願望はあったものの、世間体が邪魔をして、外ではあまり大胆になれずにいた。
とはいえ、それでもかなりのことはしているだろうが。
しかし、力哉の目しかない場所なら、もしかすると、もっと乱れてしまうかもしれない。
そう思うと、基樹は次の逢瀬が待ち遠しくてならなかった。
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