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長編小説
2-1.建物の陰で
高校生に見えた少年は、真実高校生で、名前を日下力哉(くさか りきや)というらしい。
メアドを交換した後からすぐ、メールのやり取りが数回行われ、基樹は簡単な力哉のプロフィールを知った。

そんな力哉から、昼過ぎにメールが入った。
休憩中にこっそりとメールを開いた基樹は、ぎくりとして辺りを見回す。
幸い、周囲には誰もいなかったが、携帯を持ったまま急いでトイレの個室に入った。

『今日、俺にもおしっこしてるところ見せて。待ち合わせ場所は――』

力哉の最寄り駅と、基樹の最寄り駅のちょうど中間地点にある駅。
そこを指定され、基樹はどうしようか、と悩む。

確かに排泄しているところを誰かに見られたい、という願望はあった。
しかし、その相手が高校生というのは少し、罪悪感を抱いてしまう。

一度不注意で見られているし、どちらかといえば力哉の方から強要して来ているのだが、大人として、ちゃんと断るべきではないだろうか。
そんな思いの方が強いものの、それでも、見られたいという欲求も捨てきれない。

誰にも相談できず、どうしたらいいのかわからないまま、基樹は仕事を終えた後、いつものように缶コーヒーを飲んだ。

利尿効果を促すそれは、いまや基樹に欠かせないものだ。
電車に揺られている間に、いつも通り、じくじくと尿意が沸きあがり始める。
それでもまだ、基樹は迷っていた。

駅前では、力哉が携帯をいじりながら待っていて、そのそばへと行くのはためらわれた。
が、そんな基樹に気づいた力哉が、迷うことなく近づいて来る。

「アンタの好きな場所でいいよ。どこかない?」

この辺りに詳しくないと言いながら、力哉は先導するように歩き出す。
その後をついて行きながら、基樹はどうしたものかとまだ悩んでいた。
それなのに、尿意は刻一刻と膨らんで来る。

「なあ。おしっこしたい?」

駅前を離れて人気が途絶えたとたん、力哉が振り返って意地悪そうに笑った。
その笑みを見ていると、ずくん、と膀胱が疼いて、思わず基樹は頷いていた。

「この辺り、人気がないみたい。ここならできそうじゃない?」

言われて、基樹はキョロキョロと辺りを見回す。
少し先にある建物の陰がちょうどよさそうだと思い、力哉をそちらへ誘った。

道路から少しくぼみに入ったところにある、商業ビルの裏手。
人一人通れるかどうかという場所に、迷わず基樹は入った。
それに続いて、力哉もやって来る。

しかし、いざその場になると、ためらいがあった。

「おしっこ、しないの?我慢できないんだろ?漏らしても知らないぜ」

クスクス笑いながらそう言われ、基樹は反射的にズボンの上から股間を押さえた。
すると、その姿を基樹が写メに撮り、すぐに基樹へと見せて来る。

その、恥ずかしい自分の格好に、興奮してしまった。

基樹はもどかしげにファスナーを下ろして性器を取り出すと、壁に向かって放尿を始めた。

シャアァァァ――ッ

軽やかな水音が耳に心地いい。
ビチャビチャと音を立てながら壁に当たり、壁を伝った小便が地面に水たまりを広げる。

それをうっとり眺めていると、再び力哉に写メを撮られた。

「アンタさぁ、おしっこしてる時、すげーいい顔するなぁ」

自分が撮った写メを見ながら、力哉は感心したようにそう呟いた。
その意味を基樹が知ったのは、力哉と別れた後だった。

最寄り駅で降りてから少し歩いていると、メールを受信した。
力哉から送られてきたそれには画像が添付されていて、気持ち良さそうに壁に向かって放尿している最中の基樹が映し出されている。

『今度はどこで、どんな風におしっこしたい?』

力哉がクスクス笑っている声が聞こえる気がして、基樹は思わず勃起してしまった股間を、慌てて押さえた。




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