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短編小説
バレンタインの馴れ初め(小スカ)
廊下/小便排泄/着衣おもらし/生徒×教師

田鍋(タナベ)が通う男子校には悪しき風習というものがあった。
それが本日2/14に行われる、1年生全クラスによる特別授業、調理実習だ。
しかも、実習内容は必ずクッキー作りとなっている。

そして実習で作ったクッキーは、日頃お世話になっている人に渡さなければならない。
部活動をしていれば、先輩にあげるのが当然だ。
そのため、ほとんどの生徒は、自分の所属するクラブの先輩に渡すようになっている。

しかし、中には部活動をしていない人間もいる。
そんな彼らは、知り合いや友人などに手渡すことが多かった。
中には、成績に不安のある者が教師に手渡すこともあるようだが、それで何らかの報酬がもらえるかどうかは不明だ。

そんなわけで、男子校でありながら、2/14にはそこかしこで甘い匂いが漂い、上級生の半数以上は一応ながら手作りクッキーにありつけることになっていた。

まあ、中には他校の女子と付き合いがあって、ちゃんと本物の女の子からチョコレートなりクッキーなりをもらえる人もいるのだが。

そんな中にあって、田鍋は我関せずといった様子で、教室の一番後ろの席に座っている。
ヤンキーの部類に属する彼は、1年の時は授業をサボったためにこの悪しき風習に参加しなかった。

今年はすっかり忘れて登校したものの、部活動をしているわけでもなく、特に親しい下級生もいないので、自分には関係ないと思っていた。

そんな彼に、昼休みになって、呼び出しがかかった。
実習は昼休み前に行われるので、その日の昼休みは、上級生ならばいつどこで誰に呼び出されてもおかしくはない。

しかし、あいにく田鍋を呼び出したのは教師で、しかも職員室へと行くように言われた。
友人はカワイソ〜、と大爆笑しながら見送ってくれる。
友人の笑い声を背に聞きながら、田鍋は密かに首を傾げた。
ここ最近、呼び出しされるようなことをした覚えはないのだ。

訝しげに職員室に向かうと、入り口に立つ白衣を着た、頼りなさそうな男性教員を発見する。
その男は、田鍋を見た瞬間、ビックリしたように目を見開いて、大きく身体を震わせた。

背が高く、がっしりした体格をしていることもあり、こうしてビビられることも少なくはないが、あまりのビビりように、思わず舌打ちをしてしまった。

「あ、あの……ッ」

しかし、その男性教師は果敢にも田鍋に声をかけてきた。
一体何の用があるのだろう、と訝しみながら見ていると、真っ赤な顔をして、ポケットの中からかわいらしく包装された包みを取り出して来る。

「こ、コレをどうぞ!!」
「……はあ?」

女の子が好きそうなかわいらしいラッピングを施された包みを渡され、反射的に受け取った田鍋は、思わず低い声で尋ねていた。

「何のつもりだ、コレは」
「ば、バレンタインです」
「………」

教師の癖に、生徒に敬語を使って、男性教師は茹でダコのように真っ赤な顔のまま、田鍋をじっと窺うように見て来る。
まさか、教師にこんな真似をされるとは思ってもみなかった田鍋は、どうしていいのかわからずに、手の中の包みと、目の前の教師を交互に見た。

よほど緊張しているのか、プルプルと身体を震わせ、更に真っ赤になった男性教師は。
あろうことか、その場でジョボジョボとお漏らしを始めた。

スーツのズボンが色濃く染まり、足元に水たまりができ始めるのを見て、田鍋はぎょっとしたのだが、当の本人は気づいていないようだ。
もしかすると、あまりの緊張で感覚がマヒしていたのかもしれない。

「お、おい。アンタ――」

田鍋が指摘してようやく、事態を把握した教師は、真っ赤だった顔を蒼白にして、けれど、どうすることもできずにうろたえ、その場にぺたりと座り込んでしまった。

そんな教師をどうにかトイレまで連れて行き、泣き出してしまったのを必死で宥め、何とか着替えさせた時には、田鍋はすっかりこの教師に転んでしまっていた。

その後初めて、教師が吉切(ヨシキリ)という名前で、1年生の副担任をしていると知った。
赴任してきたばかりで、たまたま目にした田鍋に一目惚れして、バレンタインの風習を利用したそうだ。

田鍋より一回り近く年上とは思えないかわいさを持つ吉切は、今では田鍋にとってなくてはならない存在だ。

高校を卒業してもずっとその付き合いは続いており、すっかりサラリーマンに変貌した田鍋と、小ぢんまりしたアパートで同棲生活を営んでいる。

田鍋は会社帰りに購入したチョコレートの包みを見ながら、小さく苦笑した。
まさか自分がこんなものを買うとは、あの頃には絶対想像できなかった。

目の前に見えて来たアパートを見上げて、田鍋の足取りは速くなる。
まるで駆けるように階段を上がり、呼び鈴を押すのももどかしくドアを開けた。

すると、目の前に吉切の姿があって、びっくりしながらも嬉しくて、田鍋はその身体をぎゅと抱きしめた。

「ただいま、センセ」
「お、おかえり。あ、あの…ちょっと…」

びっくりしているのか何なのかわからないが、吉切はモジモジとしながら田鍋の腕の中から逃げ出そうともがいている。
それを封じ込めるように更にぎゅっと抱きしめると。

「あ、駄目……ッ」

小さく悲鳴を上げた吉切が、ビクッと身体を震わせた。

どうしたのだろう、と腕の中を見下ろすと、いつかのように真っ赤な顔をした吉切がいた。
そして、彼の足元にはじわじわと水たまりができ始めている。

「え?センセ…?」
「と、トイレに行こうと思ってたんだ…」

言い訳するように言った吉切は、じわりと涙を浮かべ、その場にしゃがみ込んでしまった。

昔もこんなことがあったなあ、と田鍋は懐かしく思い返しながら、泣き出した吉切を風呂場へと連れて行き、身体を隅々まで洗ってあげた後、その身体へと快楽の楔を打ち込んだ。



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