短編小説
リク:食事中なのに…(大スカ)
食事中/大便おもらし/着衣おもらし/父親
我が家には様々なルールがある。
その中のひとつに、食事中にトイレに行かない、というのがあった。
食事の時間は毎日決まっているのだから、その前後に済ませておくように、という理由なのだが。
それを言い出したのはもちろん、両親で。
その日はたまたま、仕事が遅くなって、食事の時間ギリギリに父親が帰宅した。
それでも何とか食事には間に合ったということで安心したのか、スーツを脱いだ父親は、手を洗っただけで食卓についた。
それから家族揃っての食事が開始されたのだが。
我が家では食事中にテレビを見るのは許可されているし、話をするのも平気だ。
そのため、意外と食事時間は長く、賑やかだった。
父親はテレビの話題を妻や子供に振ったり、仕事の話をしたりと、いつもなら進んで会話に加わるのだが。
その日はなぜか、途中から無言で食事に集中し始めた。
妻がどうしたの、と聞いても答えず、ただひたすら、目の前の料理を平らげることに夢中になっている。
あれ?と思った子供たちも、父親の様子を気にし始めた。
が、父親の方は、彼らには一切注意を払わない。
父親の隣に座っていた高校生の息子が、ふと、父親がやたらと貧乏ゆすりをしていることに気づいた。
普段は貧乏ゆすりなど一切しないのに、どうしたことだろう。
そう思った彼は、父親の下半身へと、注意を向けた。
すると、よくよく見れば、やたらと尻をもぞもぞ動かしているようだ。
そして、たまに尻を椅子に押しつけるようにしてもいる。
それで高校生の息子はぴん、ときた。
「親父。クソしたいんだろ?」
ニヤニヤしながらそういうと、父親はぎくりとしたような表情を浮かべたが、それを慌てて打ち消した。
「何を言ってるんだ。食事中に下品だぞ」
「だって本当のことじゃん?」
「いい加減にしろ!」
父親は頬を染めながら、息子を一喝した。
それが事実であっても、さすがに認めたくなかったのだろう。
父親はそれでも無言で食事を続け、怒られた高校生の息子は、むっつりとした表情で、それでも食卓についたままだ。
が、その雰囲気はかなり悪く、ギスギスした空気が食卓を包み込み、誰もが会話することを止めていた。
そのため、食卓にはテレビから流れてくるニュースの声だけしかなく、それ以外は食事の音のみ。
そんな中にあって。
「ぅぁ、あ…ッ」
悲痛ともいえる、父親の小さな叫び声は、意外と大きく聞こえた。
ビックリしたように、家族の視線が父親へと集中する。
父親は、顔を真っ赤に染めて、ぎゅっと箸を握りしめ、小刻みに体を震わせていた。
どうしたのか、と声をかけようとしたと同時に。
ブリブリッ、
父親から、不吉な音が立ち上った。
それが意味するものは明白で。
父親の顔が、更に真っ赤に染まる。
ブブゥッ、ブリッ、ブリュルルルッ
けたたましい破裂音と共に、醜悪な臭いが漂いはじめる。
誰もが、父親がトイレを我慢しているだろうことはわかっていた。
けれどまさか、トイレまで間に合わないなど、誰も想像していなかった。
さっさと食事を終えた父親がトイレに駆け込むのを見て、やっぱりな、と笑い合うものだと、誰もが思っていたのだ。
それに、父親ともあろうものが、まさか、トイレに間に合わず、食事の席でお漏らしするなど、誰が想像しただろうか。
普通ならば、そうなる前に、無理矢理でもトイレに駆け込むだろう。
が、高校生の息子に下手に指摘されたせいで、父親はトイレに駆け込むということができなかった。
我慢を続けるしかできず、その結果、トイレまで間に合わなかったのだ。
父親は、椅子に座ったまま、ブリブリと排泄を続けるしかできなかった。
家族の顔を見ることはできずに、おのれの下肢へと視線を落としていたため、必然とお漏らししている自分の下肢が目に入る。
小学生の娘は、子供らしく悲鳴を上げて、リビングから立ち去ってしまった。
高校生の息子も、呆然としたまま父親を見つめていたが、何も言えずにいる。
母親はオロオロして、無駄にテーブルのそばを行ったりきたりしていたが、息子に耳打ちされて、どこかへとすっ飛んで行った。
すっかり排泄は止まってしまったが、尻にたっぷり詰まった大便が邪魔で、身動きができない。
こんな時はどうするべきだろう、と考えていると、母親がバケツにお湯を入れて、タオルを抱えて戻って来た。
息子は、母親と入れ違いにリビングを出て行き、父親は、まるで子供のように、母親にお漏らしの後始末をされて、そのまま風呂場へと連行された。
風呂場の中、シャワーで汚れを流しながら、ひっそりと泣いてしまったのは、仕方がないことだろう。
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