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Cruentus
黒猫
この辺りは街灯が数百メートルに一本しかなく暗く、勿論ながら人通りは極端に少ない。

それに、只さえ近頃は物騒な事件が起きているから完全に陽が暮れる前に帰りたかったのもあるが、早くこの屋敷の前から去りたいという気持ちが強くなっていく。

「今日はもう帰る」

「あ、待ってよ」

ボクは屋敷に背を向け、家に帰ろうと歩こうとしたその時、何かが前を飛び出して来た。

バタ!!ガシャ

「!?っ〜」

驚いて尻餅をついてしまった。

しかもド派手に。

強く打った尻をさすりながら、目の前に飛び出して来た物の正体を確かめる。

「ネコ?」

目の前に飛び出してきたのは黒猫だった。

猫がいきなり目の前に飛び出してくるなんて思わなかったから余計にだ。

黒猫と目が合う。

ボクは何だが目を反らせずにいた。

一瞬の筈なのに長い時間にも感じた。

黒猫はボクの顔を見るなり「にゃっ」とひと鳴きし、目を細めた。

ボクのただの考え過ぎかもしれないが、なんだか馬鹿にされた気がしてならない・・・

「アキ大丈夫かよ?」

「あ、あぁ・・・」

「アキがこんなに驚く姿初めてみたかも。
アキもこんな風に驚くんだ!にしても、何にそんなに驚いたんだ?」

「猫がいきなり飛び出して来たから」

「猫いないけど?」

「ほら、そこに――」

あれ、居ない・・・

確かにここに生意気そうな黒猫が居たはずなのに、いつの間にか居なくなっている。

来栖は、くんくんと鼻を鳴らしながら匂いを嗅いでいた。

「猫の匂いはしないけど・・・微かにイヤな匂いがする・・・」
匂い?

たしかに来栖の嗅覚はすごいと思うが・・・

「アキ、早く帰ろ。家まで送っていくから!!」

「来栖!?」

急いでその場から離れるかの様に、来た時と同様来栖に腕を引きずられる。

ふっと何かの視線を感じて振り返る。

誰かに見られてる?

視線の先を探ると、あの屋敷の二階の窓からだ。

閉め切っていたカーテンが微かに揺れていた。

またその時。

にゃん

猫の鳴き声が聴こえた気がした。



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あきゅろす。
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