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鳴かぬ蛍が身を焦がす



冴木君が舞台を下りて生徒の列に戻っても、体育館の中は恐ろしく静かだった。

その静けさの中、真幸先輩が次の段階に移る前に僕に歩み寄ってきて、まだ皆に伝えたいことはあるかと尋ねてきた。きっと話を途中で遮られてしまったことを気にしてくれていたんだと思う。でも僕にはもう話したいことはなかったから首を横に振った。
確かに話は途中で終わってしまったけど、僕の想いは冴木君との言い合いの中で吐き出してしまったり真幸先輩が代わりに言ってくれてたから伝わっているだろう。それにすぐに謝罪がほしい訳じゃなくて、まずは向き合ってもらいたかったから今はこれで良いと思った。

そんな僕の気持ちを察してくれてたのか、真幸先輩は聞き返すこともなく「そうか」と微笑んでまた舞台の真ん中に戻っていく。
それから今までの証言に異議がないか先輩が全生徒に問い掛けたけど誰からも声が上がることはなく、総会はいよいよ終盤を迎えた。



「――……では、証言により本議題の正当性が認められたので採決を取りたいと思います。執務放棄・職権乱用・破壊及び暴力行為・制裁活動等の行為に関わった者全てに対して処罰を与えることに賛成の者は挙手を」


生徒総会は執行部に開く権利があるけど決定には執行部以外の全生徒の三分の二以上の賛成が必要になる。だけど今回の採決で大事なところはそこじゃなくて、挙手をするということが処罰対象者が自ら罰を受けることを認めるに等しいところだ。それに皆もすぐに気付いたのか、再度の問い掛けに今度はざわめきが起こった。

それでもすぐに半数ほどの人が手が上げ、悩みながらも次第に処罰を受けるだろう人達も手を上げ始める。その中には近くにいる由比君や筒谷先輩達も勿論入っているし、そっと舞台の反対側を見ると会長も僕に視線向けながら手を上げていた。


「挙手により賛成多数ということで、執行部の権限を以ってこれより処罰を申し渡します」


しばらくするとほぼ全員が手を上げたことで決着がついて、発せられた真幸先輩の言葉に緊張が走る。

僕としては皆の今の覚悟だけでも充分嬉しいけど、手を上げてない人もいる以上それだけじゃ駄目だってことも分かっていた。だからどんな処分を下すのか、その内容は先輩しか知らないから僕も気を張りながらじっと次の言葉を待つ。


「……今回の議題に関わっている者は、明日から二週間の間に自ら処罰を受けに臨時執行部室として使用する予定の生徒会室へ来ること。その時に個々の処罰を伝えます。なお、対象者は全て把握していますし、自主退学・辞職は一切認めません。………自分の行動に対する責任をこの学園内でどう取るか、よく考えるように」


そしてゆっくりと真幸先輩が話し出し、その決定に誰もが驚きを隠せないまま総会は終了した。


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