鳴かぬ蛍が身を焦がす
*
「なんで辞めないの!?」
「あんたがいると生徒会の皆様の気に障るの!!」
『あんたなんか早くいなくなればいいのにッ!!』
自分より小柄な子達に詰られながらただ暴力の捌け口になる。
これが僕の最近の日課だ。
もう何週間もこんな日が続いて反抗する気も起きない。体力も限界で、蹴られているというのに痛さも感じない。
あぁ…そういえばどうしてこんな事になったんだっけ……?
朦朧とする意識の中で、僕は記憶を遡っていった。
僕が通う翠川学園は全寮制の男子校だ。所謂“金持ち学校”というやつで、学費も施設も公立や普通の私立とは各段の差がある。
僕の家は会社を経営しているけど、大層な金持ちな訳じゃない。だから中学まで公立に通ってた。そんな僕がどうしてこんな所に通っているかというと、お父さんが将来の為にと多少無理をしていれてくれたんだ。
お母さんの話だと、どうやらライバル会社の社長に僕が公立に通っていることを馬鹿にされたらしい。「父さんに甲斐性がないから」と落ち込んでいたのを思い出す。
とにかくそんな訳で僕はこの学園に入り、一年は何事なく過ごした。人付き合いが苦手な僕には特別仲のよい友達は出来なかったけれど、クラスの子とはそれなりに付き合えた。
男子校の特色らしいホモやバイには驚いたけど、平凡な僕には関係ないことだし。
親衛隊なるものもあるけど、彼等は自分達の好きな人が健やかな学園生活を送れるように尽くすだけで生活態度も成績も優秀、容姿も整っていてまるで模範生徒の集まりだったんだ。
勿論彼等の崇拝対象である生徒会も、癖があるメンバーのようだけど全生徒から尊敬される素晴らしい生徒会だった。
そう、だった。
だってそれはもう全て過去のことだから。
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