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恋は曲者、俺は被害者
全てを照らす太陽のようでした


「―…でね、俺の夢はパティシエなんだ!あ、パティシエっていうのは菓子職人の事だよ。こないだも試作で青色の食紅混ぜてケーキ作ったんだけど、全然美味しそうじゃなくて!やっぱ好きだからって食べ物に青色はよくなかったなぁ…」


再び少年の涙が止むと、虎徹は他愛のない話を始めた。少年を元気づける為でもあるが、なにより少年の事を知って仲良くなりたいと虎徹は思ったのだ。


「…俺は、青色でも食べたいな…」

「本当!?」

「うん…貴方が作るお菓子は、きっと美味しいと思う」


そう言うと微かに微笑んだ少年を見て、虎徹も同じ様に微笑む。

少年はその笑顔を見て頬を赤らめると、おずおずと話しだした。


「俺…家帰ったらちゃんと言います。勉強の事も虐められてる事も…」

「うん。言うの勇気いるかもしれないけど頑張ってね」

「はい、もう逃げるのは…止めます」


そう言って少年はまっすぐ虎徹を見つめた。向けられた瞳は先程までの涙に濡れた悲しげな瞳ではなく、決意を秘めたような力強い瞳だった。














「あっ、俺そろそろ帰らなきゃ…」


気付くと真っ暗になっていた空を見上げて虎徹が呟く。まだ少年と話していたい気持ちもあるが、家の手伝いがあるので仕方がない。


「俺、伊藤虎徹って言うんだ!君は?」

「………」


出来れば友達になりたいな、と思って名前を尋ねた虎徹だったが、少年は名乗りはしなかった。


「伊藤さん…伊藤さんはどんな人に憧れますか?」

「えっ?えっと…明るくて、いつも元気で笑顔な人かな。あ、喧嘩とか強いのも憧れるかも…俺、弱っちぃからさ」


会話が成立しない、唐突な質問にも虎徹は真面目に答える。それを聞いた少年は「それじゃあ……」と口を開いた。


「俺、伊藤さんが憧れるような人になります。そうしたらいつか……いつか会いに行きます」


少年はしっかりとした口調でそう言うと、先程虎徹が渡したハンカチを取り出す。


「その時までこれ、持ってていいですか?名前も…次に会った時に言います」

「……うん。わかった、持ってていいよ。また会えるの楽しみにしとく」


何か、少年の強い決意のようなものを感じて虎徹はあえてそれ以上何も聞きはしなかった。


「俺も…また貴方に会いたいから頑張ります。伊藤さん…今日はありがとう」


少年は最後に満面の笑みを浮かべると、走り去っていく。その後ろ姿を見送った虎徹は心の中でもう一度『頑張れ』と声を掛けた。

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あきゅろす。
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