恋は曲者、俺は被害者
お弁当には愛情いっぱい
動物と触れ合っている間に昼になり、虎徹と千草は弁当を取れる場所まで移動した。なんとなく人が集まる場所は恥ずかしくて、人気のない芝生の上に座ると虎徹は弁当を広げた。
中身は卵焼きにから揚げ、ミートボールにポテトサラダ、おにぎりは梅と鮭という定番の内容だ。けれど卵焼きは千草の好きな甘めの味付けにしてあるし玉ねぎがあまり好きではない千草の為にポテトサラダに玉ねぎは入れていない。
「美味しそーー!!」
「見た目はうまく出来たんだ…!味見はしたけど、千草君の口に合うか分からないよ?」
「いや、絶対美味しいって!それに虎徹くんがこうやって俺の為に作ってくれただけでも嬉しいもん」
千草はそう言って「いただきまーす」と手を合わせると最初に卵焼きを口にする。すぐ「おいしー」という言葉が出ると虎徹は安心したような嬉しそうな気の抜けた笑みを浮かべた。
「俺、甘い卵焼きだぁい好き!」
「そうだと思って甘くしたんだ。良かった」
「えっ、俺の為に甘くしてくれたの?」
「うん。だってさ…千草君の為に、作ったんだし…」
自分でも恥ずかしい事を言っている自覚があるのか虎徹はもじもじと視線を千草から逸らした。一方千草は虎徹がそういった細かいところまで自分を見ていてくれた事に感激しながら、次々をおかずに手を出していく。
「そんなに詰め込んだらのど詰まっちゃうって!」
「だって止まんないんだもん!美味しいし、嬉しいし、もう最高!」
「そっ、そんなに褒めても何もでないよ!」
「本当のことだもーん!ほら、虎徹くんも食べないと俺が全部食べちゃうよ?」
どんどん赤くなる虎徹を微笑ましく思いながら、千草は箸で掴んだミートボールを虎徹の口元に運ぶ。
「はい、あーん」
「えっ!?」
「これ、デートの定番でしょ?やってみたかったんだー」
食べてと言わんばかりに千草はミートボールを虎徹の唇に軽く押し付けた。
虎徹は周りを気にしながらも口を開くとぱくっとそれを食べる。
「ふふっ、らぶらぶだねー俺達!」
「…自分で言っちゃうところが千草君らしいよね」
口ではそういいながらも、虎徹も端からみたら自分達は充分恋人に見えるんじゃないかと内心嬉しく思っていた。
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