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恋は曲者、俺は被害者
消毒って大事です



「途中でやめちゃってごめんね」

「ううん、平気。ありがとう」


申し訳なさそうに謝る千草に虎徹は笑顔で礼を言った。

千草が急に落ち込んでしまって中断していた手首の手当てを最後までしてもらったのだ。


「あとね…まだ消毒したいところがあるんだけど、いい?」

「?…いいけど、他に怪我なんてしてる?」

「怪我じゃないんだけど、気になるっていうか」


はっきりしない返事をしながら千草は虎徹をゆっくりソファに寝かす。

取り敢えず言いなりになっていた虎徹だが、シャツが捲られると慌てて千草を止めた。


「なっ、何!?」

「山下にさ、触られてたでしょ?そのままにしとくのは絶対嫌!だから……」


千草は虎徹の胸元に顔を寄せる。そして鎖骨の辺りから徐々に下へと唇で触れていった。


「ひぁ……これ、んッ…消毒じゃ…ないよっ」

「消毒だよ?山下の痕を消してるんだー」


ただ触られただけなのだから痕などないのだが、千草は気になるらしい。

一方虎徹は、唇が触れる擽ったさに顔を真っ赤にして体を小さく震わせている。


「…ぁ…は、ふ…ひぅ…ま、だ…?」

「んー…」

「ひゃ、ぅ…千草く、ん…」

「……もう、いいかなぁ」


虎徹の目にうっすら涙が溜まっているのを見ると、千草は唇を離してシャツを下ろした。

擽ったさから解放された虎徹は体の力が抜け、大きく息を吐く。


「ちょっとやり過ぎちゃったかな…嫌だった?」

「…嫌っていうか…擽ったいし、はっ…恥ずかしかった」

「じゃあ気持ち悪くなかった?」


寝転んだまま動いたせいか少し乱れた虎徹の衣服を直しながら千草が尋ねる。「平気だったよ」と返事をすれば、何故か嬉しそうに千草は微笑んだ。

その笑みを見ていて、虎徹の中でふと疑問が湧く。


そういえば山下さんに触られたときはあんなに気持ち悪かったのに、なんで千草君は平気なんだろう……。


何だかその疑問がとても大事な事に思えて、虎徹は忘れないように胸に刻んだ。

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あきゅろす。
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