二周年記念プチ企画小説
関係性
前にもこんなことがあったなぁと、俺は両隣の先輩を見上げた。
「成瀬、美味いか?」
「……まだ沢山あるから、好きなだけ食べろよ」
両隣から声を掛けられたけどどうしたものかと考える。俺の前には汀田先輩の持ってきた玉露と芸術的な細工の和菓子、穂純先輩の持ってきた紅茶と贅沢すぎるほどフルーツののったタルトやケーキが大量に並べられていた。それぞれ一個ずつ食べて、勿論美味しかったけれど流石に一人で全部は無理だろう。なにせ今日は空が不在なんだ。
「美味しいです。……ただ沢山ありますし、先輩達も一緒に食べませんか?」
「お前の為に持ってきたのに?」
「だって余らせちゃったら勿体無いじゃないですか。穂純先輩も、はいどうぞ」
俺は二人に互いの持ってきたものを渡すと、自分の皿にも練りきりとタルトタタンを載せる。二つ一緒なのはどちらか片方だと、選ばなかった方のお菓子を持ってきた先輩が明らかに落ち込むからだ。
困ったものだが、二人ともガタイも良くて顔だって大人っぽいのに子供丸出しでつい世話を焼きたくなる。この性格で損していることが多いのは分かってるけど、治るものじゃないだろう。
「成瀬が食べさせてくれんなら食うぜ」
「………お、俺も」
「……もう、仕方がないですね」
ふぅと溜め息をついて穂純先輩に一口、汀田先輩にも一口差し出すとぱくっと食べられた。なんだか大型犬に餌をやっている気分だ。
「じゃあ俺が飼い主か…?」
「何がだ?」
「…どうした?」
「いえいえ、別に。あ、もう一口どうぞ」
一見端から見たら何やってんだと思われそうな状況だけど、龍治さん達といる時とも空達といる時ともまた違う楽しさを、もう一口ずつ差し出しながら密かに楽しんでいた。
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