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二周年記念プチ企画小説
無意識



無意識というのは厄介なものだ。


視界の端に黒髪が映る時、低すぎ高すぎ落ち着いた声が聞こえた時、石鹸のような匂いのした時、気付いたら周りを確かめている。

近くに成瀬がいるんじゃないかって思ってその姿を探してしまう。


けれどそういう時は大抵別人で、期待した分落胆も大きくて上総によくからかわれる。自分でも馬鹿だなと思いながらも無意識なものだから止めることは出来なかった。





大体クラス以前に学年も違う俺と成瀬が偶然すれ違う可能性はかなり少ない。それでも今みたいに本当に偶然会う時もあるもんだから、期待することを止められないんだろう。












「―――……それで先輩は寝床を探してたんですか」

「……あぁ」


図書室で成瀬を見つけた俺は、気付いていない振りをして中に入って逆に成瀬が気づくまで待っていた。
あんなに探しておいて変なものだが、自分から声を掛けるのは気恥ずかしくて出来ない。

おまけに探していたなんて言うことも出来ず、溜まり場の周りが騒がしくて寝れるところを探していたなんて嘘までついてしまった。


「じゃあ俺がいるの邪魔じゃないですか?」

「……そんな!こと、ない………寝たかったけど、成瀬と話すのは…楽しいから」

「そうですか、良かった。………あ、そういえばこの間先輩が貸してくれた本とても面白かったです!今持ってるんですけどお返ししても平気ですか?今日の休み時間に読み終えて………―――――」


相変わらずまず気遣いみせる成瀬に癒されながら、貸した本を受け取って感想を楽しげに話す姿を眺める。
笑みが浮かぶようになった表情は本当に可愛くて、それが今は俺だけに向けられていると思うと時間が止まればなんて考えてしまう。


けれどそんなことはあり得ないから、この幸せな時間が終われば俺はまた成瀬の姿を探すんだろうと思った。




あきゅろす。
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