二周年記念プチ企画小説
無自覚
男同士の絡みを見て楽しんでいる俺が言うのもなんだけど、平は少し変わっている。
不良でチームの幹部の癖に目立つのが苦手だって言う。じゃあ何でチームに入ったんだって聞いたら総長達を見てると楽しそうだったからと平は答えた。楽しそうなのを見ているのが好きらしい。そうしたらいつの間にか幹部に推されていて、頼られると断れない性分なのか遊撃隊長になったんだとか。でも隊長になった後も基本的なスタンスには変わりがなくて、そのせいで俺はつい最近まで平が幹部だってことに気付けなかった。
…………なんて事を何時ものように放課後のBL観察中に考えていたら、つい口をついて心の声が出てしまった。
「平って変わってるよなぁ」
「まさか鹿ヶ谷からそんなことを言われるとは思ってなかったな」
それを聞いた平は読んでいた雑誌を置くと少し不服そうな顔をする。そういう感情を顔に出すのは平にしては珍しかったし、絶対自覚ないだろうからもう少し言ってやった。
「いや、俺は世間一般から見ておかしいって自覚はあんの!でも平は自覚ないだろ?喧嘩も走るのもそんなに好きじゃなくて、目立つのが嫌な人は普通楽しそうに見えても不良にはならないんだからな。あと俺の話も真顔で聞くし。聞かせといてこんなこと言うのも変だけど、俺の事気持ち悪くないのか?」
「いいじゃねぇか。あそこにいるとなにもしなくても楽しいし、居心地もいい。それに鹿ヶ谷の事だって気持ち悪くないぞ?だって話してる時のお前楽しそうだし、楽しそうなお前を見てると俺も楽しい」
俺はからかってやる気満々でいたのに返ってきたのがまるで告白みたいな台詞で、おまけに輝かんばかりの笑みまで浮かべてやがる。
妄想は得意だけど、現実でなんか見慣れてないからイケメンオーラに負けて変な動悸がしてきた。
「ばっ……!そういう台詞は健気受けとかに言えよ!」
「いや、お前見ててそう思うんだから鹿ヶ谷に言わなきゃ意味ないだろ。それに健気受け?の奴よりきっと鹿ヶ谷といる方が楽しいだろうし」
だけど笑い掛けられたぐらいで動揺したことに気付かれたくなかった俺は、何事もないようにツッコミながら返事をした。でも思ってもいなかった強烈な返しがきて耳まで熱くなってしまう。
「ッ………!!この、イケメン野郎っ無自覚タラシ!」
結局自分でふった話題に自分がついていけなくなって、悪口なのか誉め言葉なのかよく分からない台詞を吐いて屋上を飛び出した。
そのくせ、少し嬉しいと思う俺はやっぱり変わっているんだと思った。
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