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縁は異なもの、味なもの
*


『時間ならいくらでもやるよ』と先輩がすごく嬉しそうに笑みを浮かべて言うから、安心するのと同時に思わず照れてしまった。
俺みたいにひねくれてる人間には、先輩の真っ直ぐさは眩しい。その眩しさは恥ずかしくもあり、憧れもするんだけれど。


「…………あ、あの先輩」


少しの間顔の熱が引くのを待つと、もう一つ今日聞こうと思っていたことを尋ねようと先輩に話し掛けた。だけどちょうど予鈴が鳴ってしまい、俺の声と被る。

タイミング悪いな……。

前だったら一時間位サボっても良かったけど、最近欠席が多いから今日はそうもいかない。残念だけど、一旦話を終わりにして俺は教室に戻ることにした。


「先輩、すみません。俺、教室戻らないと…。本当はもう少し話したい事があったんですが」

「そんな気にすんな、俺としては成瀬の気持ちが分かっただけで充分なんだからよ」


謝りながら腰を上げた俺に、先輩はそう声を掛けながらついてくる。

ドアの前まで来ると「送ろうか?」と聞かれたけど、棟が違うだけで同じ四階だから断った。


「じゃあ気をつけて戻るんだぞ」

「近いから平気ですってば。あ、そうだ……先輩も明日からはまたお昼来てくれますか?」

「勿論」

「なら明日は先輩の好きなものも入れておきますね」


心配性だった父さんみたいな言葉に笑いながら明日の昼食の約束をすると、俺はドアを開ける。

予鈴も鳴ったし特別棟だからか生徒はいない。


「成瀬。話の続き、お前の都合のいい時で構わねぇから」

「はい」


返事をしながら出来れば早めに話の続きがしないなと思っていると、ごそごそと制服のポケットを探りだした先輩に口を開けろと言われた。俺は言われた通りにすると、ぽいっと口の中に何か投げ入れられる。


「………あまい」

「飴だ、飴。イチゴ味、だっけな。ただでさえ細いのにまた痩せただろ、だから糖分摂っとけ、んでもっと肉つけろよ」


イチゴ味の飴と先輩、なんとも似合わない組み合わせだ。だけど笑うよりもころころと口の中で転がる飴のあまさと先輩の気持ちにまた顔が熱くなった。


「あっ、ありがとうございました!また、明日っ」


その熱が今度はそう直ぐには治まりそうになくて、俺は顔を隠しながら教室に向かって走り出した。

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