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縁は異なもの、味なもの
*(龍治視点)


「じゃあ、少し待っててください」


連里は「花崎にばかり任せちゃ悪いですから」と言って俺達の注文を聞くと、席を離れて裏に行ってしまった。

その姿に休んでいいと言っても何かと店の手伝いをしてくれていた連里の姿を思い出して思わず頬が緩む。まだ半年程しか離れてないのに、なんだろうかこの懐かしさ。でも、今はその懐かしさに浸っている時じゃない。連里がいない今がチャンスだ。


俺は声を潜めて、今日まで気になって気になって仕方なかった事を口にした。


「おい、誠。今この教室にいんのか?」

「誰が?」

「阿呆、電話でいってた奴だよ。…連里に惚れてるっていう」

「…………あぁ!」


すぐに返事はなくしばらくの間の後にやっと今思い出した、みたいな返事が返ってくる。


「忘れてた訳じゃねぇよな」

「違う違う。龍が覚えてたことにびっくりして」

「…テメェ、馬鹿にすんなよ」


確かに俺は忘れっぽいが連里の事となれば別だ。只でさえ、うちの連里に手ぇ出そうとしてる馬鹿野郎共がいるって事でイラつくのに、さらにイライラさせやがって…!

そんな気持ちが伝わったのか、白が俺と誠の間に入くる。


「誠君、そうやってすぐ龍をからかわない」

「ふふっ、はーちゃんごめんねぇ」

「まぁ、誠君は昔からそんな感じだけどね。だから、龍もこれぐらいでイライラしないでよ。今は連里君の事でしょう?」


そうだった。すぐカッとなるのは俺の悪い癖だな。白がいるから昔よりはましだが……。

気持ちを落ち着けて、もう一度誠に尋ねる。そうすると「隣の席の二人」と小さな声が返ってきた。

隣というと穂純と望月、それにさっき連里と話していた奴と綺麗な顔をした奴の四人だ。


……まさか。


「二人のうちの一人……穂純とか言わねぇよな」

「この場合は残念と言うべきかおめでとうと言うべきか」


と言うことは正解って事だな!?クソ、穂純の野郎ずっと接触禁止令出しとくんだった!よく考えりゃあ他人に殆ど興味がねぇアイツが連里に興味を持った時点で怪しいじゃねぇか!

俺が自分の愚かさに拳を震わせていると、今度は白が口を開く。


「ねぇ、もう一人だけどさ……僕の予想ではさっき連里君に耳打ちしてた子だと思うんだけど、合ってる?」

「どうして、そう思ったの?」

「なんというか、彼の連里君を見る目がね……妙に優しい感じだったから」


白の話を聞きながら俺は視線を話題の生徒に向ける。

穂純程の身長に鋭い印象の顔つき。みた感じ悪い印象は受けない。

気付かれる前に視線を戻すと、ちょうど誠がニヤニヤとした笑みを浮かべて「正解」と言うところだった。


「やっぱり!」

「はーちゃんすごいねぇ。彼は汀田修二、二年A組学年次席。風紀委員長もやっていて人望もある。連君の事は風紀に入れたくてずっと接触してたけど、好きになったのは最近だと思うよ?せっかくだし穂純の方も説明してあげようか?」

「いい。アイツの事はよく知ってるし」


穂純も悪い奴じゃない。仲間思いだし、根は優しい。汀田って奴もいい奴みたいだ。

が、それとこれとは別だ!誠の言うとおり連里の支えになってくれる奴が現れるのは嬉しい事だが、保護者としてそいつが本当に連里を幸せに出来るか見極めねぇとな。

一人心の中で意気込むと、俺は穂純と汀田を注意深く観察し始める。


「龍、張り切ってるねー」

「誠君こそ、二人を見る目は昔みたく鋭いよ?」

「あはははは、そういうはーちゃんこそ」


結局三人とも心境は同じらしく、俺達は連里が来るまで隣のテーブルに視線を向け続けた。

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あきゅろす。
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