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TRIP
6.

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目が覚めた時、サワサワと木の葉が擦れる音が聞こえていた。
状況を理解するのに暫しの時間を要した。


「目が覚めたか?」

思考を巡らせていると何処からかふいに低い声が聞こえ、私は起き上がった。
フードを被った男の人がそばに座っている。
少し俯いているので顔はよく見えないが、声からしてまだ若いようだ。


「ここは‥‥?」

その男の人以外に人の姿は無い。


「森だ」

それだけを言って黙ってしまった。
せめて何処の村の森と言ってくれればいいのに。
正確な位置を知ろうと私は更に質問をしてみる。


「エルトラ王国の?」


「フレイア公国だ」

まず、そこから訂正されて私は困惑した。
フレイア公国は第一大陸の北半分を占めている。
一方、私の街があるエルトラ王国は第一大陸より北に位置する第二大陸全土を占めている連合王国だ。
二つの国の間には海があり、普通に考えても気を失っている間に移動出来る距離じゃない。
とまで考えて、はたと直前の記憶を思い出した。
結婚式の最中の‥‥黒い、穴。その中に落ちてしまった。
それでこんな所に‥‥?
むむむ、と首を傾げた。


「倒れてた時点で何かあったんだろうがここはフレイアの森だ。起きたならさっさとどこかに行けば良い」

男の人は横を向いた。
ぶっきらぼうなその物言いに私は溜め息を付いた。


「そうね、だったら港に行く道を教えてくれる?出来るだけ早く帰りたいの」


「‥‥ここからだったら北に行けば港がある」


「ありがとう。助かったわ。それじゃあさようなら」

動きにくいドレスの端を摘み、足早にその場を立ち去る。
みんながみんな他人に優しい訳ではない。
それは解っていたが見知らぬ土地ではそれが少し寂しい。
それでも見ず知らずの人に迷惑をかけることはしてはいけない。








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