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TRIP
3.

街に戻って港へ向かうと沢山の船が泊まっていた。
全ての船着き場に船があり賑わっているように見えるのだが、クロは首を傾げる。


「どうしたの?」

私が聞くとクロは返事をせず、近くを歩いていた商人らしき男に話し掛けた。
話が終わったのを見計らってクロに声を掛ける。


「ねぇ、どうしたの?」


「行けなくなった」

クロは端的にそう告げた。
もうここには用が無い、と言われてもやはりどういう訳だか分からない。


「一から十まできっちり説明してよ」

理由も知らずに、ただ行けないと伝えられても納得が出来ない。


「俺の居たところが、岩が割れたから外に出て来たって言っただろ。俺みたいに出ていく奴が多いから大公が船を港から出さないように命令したらしい。だからこの港からは船は出ない。出港出来るのが明日‥‥は無いにしても早くて一ヶ月か二ヶ月、または一年後ぐらいになるからここに留まっても無駄だ」

クロの言葉で私の頭の中は真っ白になった。
帰れないのだろうか。皆の所へ、リオの所へ。
そう思った時視界が滲んできた。泣いてると気付いたのはクロが慌てたからだった。


「な、泣くな!別に二度と帰れない訳じゃない」

それでも涙は止まらなくてどうしようも無い。
困ったクロが恐々と手を伸ばして涙を拭う。壊れ物を扱うようにそっと触れた手は温かい。


「‥‥今すぐ行きたいなら遠いが違う港から乗ればいい。噂では南東の方角に港が有るはずだ」


「本当‥‥?」

涙を乱暴に拭って私は顔を上げた。


「噂だがな。行ってみる価値はある。‥‥しばらく倹約しないとな。野宿は女にはキツイだろ」

私は結婚式の途中だったことと皆が心配していることを考えればゆっくりなんかしていられない。
しかしクロは今すぐにフレルに行かなければならないという理由はない。


「ついて来てくれるの!?ありがとう!」

お礼を言うとクロがバッと目を逸らした。
あまりにも急に違う方向を見るものだから不自然に感じてしまう。


「やめろっ、‥ジロジロ見るな」

クロが焦った様子で今度は横を向く。


「照れ屋なの?」

冗談でそんな言葉を言うと


「うるさい!」

と一蹴された。
私は何だかクロのことがほんの少しだけ解ったような気がして思わず口を綻ばせた。








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あきゅろす。
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