短編 しあわせうさぎ★ わたし、うさちゃん。 3LDKがわたしのお家。 ご主人さまはたまにすごく怖くなる。 逃げるわたしの足をつかんで、頭に血が上って嫌がるわたしを、怖がるわたしを見て楽しむの。 振り回されて泣くわたしを見て笑うの。 おねがい、下ろして。 でもねたまに優しいんだ。 わたし、うさちゃん。 いもうとと一緒の6畳がわたしのお部屋。 ご主人さまはたまにすごく怖くなる。 逃げるわたしを抱きかかえて、ベランダから身を投げ出すのを嫌がるわたしを、落ちると怖がるわたしを見て楽しむの。 ゆらされて落ちそうだと泣くわたしを見て笑うの。 おねがい、下ろして。 でもねたまに優しいんだ。 わたし、うさちゃん。 暖かい布団がわたしの居場所。 ご主人さまはたまにすごく怖くなる。 逃げるわたしの鳩尾を押さえて持ち上げて、息が苦しくて嫌がるわたしを、ジタバタ抗うわたしを見て楽しむの。 死にたくないと泣くわたしを見て笑うの。 おねがい、下ろして。 でもね、たまに優しいんだ。 ねぇ、ご主人さま。 どうしてわたしを閉め出すの? どうしてわたしを閉じ込めるの? どうしてわたしをのけ者にするの? でもね、たまに優しいんだ。 だから、恨むのなんて筋違い。 学校に行かせてくれるのだから、 お土産買ってくれるのだから、 殺しはしないのだから、 だから、怨むのなんて筋違い。 恨めしい怨めしい。 どうして? どうして? そうして感情に蓋をする。 わたし、うさちゃん。 わたしはきっと、しあわせです。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 死合わせ、です。 [*前へ][次へ#] [戻る] |