温室
兄様が出て行っちゃって、私は一人部屋の中…
つまらないから、兄様が私の誕生日にくれた温室へ行こうかな…
《温室》
このガラス張りの温室は兄様が私にって造ってくれた温室。
私の宝物――
お花がいろいろと植えてあったり、鳥が飛んできたりもする。
私は、この温室が1番好き…
兄様はいないけれど、友達…もいるし、兄様の好きな花も置いてあるから。
バサバサバサ
『……あ』
そう、お友達…――
[ハクレンこんにちは…]
『こんにちは…』
一匹の鳥がやってきた。
真っ白でふかふかのフクロウ。
少し前に怪我をしてここに倒れてたのを発見して、それで手当をしてやると、いつの間にか定期的に来るようになった。
[ハクレンにオミヤゲです]
そう言って…―いや、そう脳内で告げられてその鳥を見つめる。
口元には薔薇を加えていて手を差し出すとそこに薔薇を落とした。
『……ありがとう…』
[御礼はいりませんよ…貴女がいなければあの時、僕は死んでいたかもしれない。だからこれくらい、当たり前だと思って下さって結構ですよ。]
『……そう……』
私は喋っているけど、この鳥は喋っている訳じゃない。
この鳥はテレパシーで私の脳に言葉を送り込んでくる。
皆、一緒。
だから鳥達とは私しか喋れない。
なんで話せるかとか、
なんで気持ちがわかるかとか、
そんなことは、
そういうのに関しては、
全てなにもかも忘れてしまった。
でも別に知ろうとも思わない。
私には、兄様と、この温室があれば十分だから…――
(他は何もいらない…)
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