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半熟騎士の日記帳
第一章 建国記念祭
「ああもう。早くしろよ、ローザ」
 イライラと地面を踏み鳴らす少年は、リッキー・ターム。濃い金の短髪を無造作に散らしている。彼は、ややきつめの瞳でローザ――ローズマリー・フュエルを睨み付けた。
「何よ。少しくらい待ってくれたって、いいじゃない」
 唇を尖らせて頬を膨らませるローズマリーは、赤毛の混じる茶髪の少女で、一房の三つ編みを右の肩に垂らしている。黄色のワンピースの裾はふわりと広がっていて、あまり機敏な動作には向かない服装だ。
「ねぇ、マルゥ。マルゥは、待ってくれるわよね」
 小首を傾げるローズマリー。
 マルゥと呼ばれた茶髪の少年――リッキーよりも頭半分背が低く、ローズマリーをわずかに見上げる格好になる――は、困った顔で頷く。
「もちろんだよ、ローザ。そりゃあ、友達をおいていったりはしないよ。でも、急いで――」
 同じような年代の子供たちが一斉に駆けていくのを、そわそわと肩越しに見ながら、マルゥが急かす。
 それらを微笑ましげに見守るのは、まだ若い、屋台引きの男。
 彼は快活に笑い、
「ハハハハハ。なぁに、坊主達。焦らなくとも、結団式にはまだ時間はあるさ」
 言って、少年達に焼きたての甘菓子を一袋。
「こいつはオマケだ。とっときな」

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