半熟騎士の日記帳
第二章 ふるさと
「なんで、隠してたのさ」
自分だけが相手に気がつかなかったことに、彼は、まだ腹を立てていた。ぶつぶつと、文句を言っている。
「隠してたわけじゃないさ」
イヴンは、御者台の背もたれに体重を預け、アシュレイの手綱さばきを見守っていた。
「知ってると思ってたから、言わなかっただけだ」
「知らないよ!」
むぅっ、と、アシュレイが手綱を握る手に力を入れると、馬車が動きを止める。
「おいおい……、」
イヴンは、勘弁してくれよ、という目で隣を見たが、それ以上は何もいわなかった。
代わりに、軽く馬達の尻を叩く。
すると、馬車がまた、動き出した。
「……慣れてるね」
「まあ、もう三年くらいは、こいつらと一緒にやってきてるからな」
得意げに言う、イヴン。
馬車は進み、風景が流れていく。
途中、ふと、 バートが思い出したように、話題を最初に戻す。
「俺たちが、変ったって言いましたけど……そんなに変わってますか?」
確かに。
彼らがこの町にいたのは、まだ、子供の頃。
十二歳で中等学校を卒業するまでだ。
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