半熟騎士の日記帳 第一章 港町・シャロン 「……そうですか?」 「そうそう。いつの間にか背も伸びてやがるし」 「……それは、まあ、あの頃よりは……」 「ま、まだまだちびだけどな」 「……放っておいてくださいよ」 きょとんとするアシュレイを余所に、親しげに語を交わす、二人。 アシュレイが、面白かろうはずもない。 そもそも、この我儘な青年は、放っておかれるのに慣れていないのだ。 「バート!」 怒ったように、親友に声をかける。 すると、バートは、ようやく、アシュレイが会話に参加していないことに気がついたようだった。 「なんだよ、アッシュ?」 責められるいわれはない、と、不思議そうな顔をする。 アシュレイが、 「なんだよ、じゃないよ!」 そう脹れっ面で声をとがらせると、彼は、ますます不思議そうに、言った。 「でも、この人は……」 御者を指してバートが言うのと、 「なんだ、気づいてなかったのか」 愉快そうに御者が自分を指すのは、ほぼ同時だった。 [*BACK][NEXT#] [戻る] |