半熟騎士の日記帳
第一章 建国記念祭
「リッツ一座の秘蔵っ子、ルイサス・アーリクの剣舞だよ!」
横笛を手に、少女の傍らに寄り添うのは、同じく十代前半の少年である。色素の濃い髪を、無造作にうなじで結んでいる。
彼の名は、ヤト・ハルラ。
先ほどから、次々と繰り広げられる一座のパフォーマンスを、横笛一本の演奏で魅惑的に盛り上げている。
ヤトが深々と息を吸い込み、その吹き口を唇にそっと押し当てると、
ひぃー……よぉ。
横笛が、高く鋭い音を発し、音楽が流れ始める。
陽光をきらきらと弾き返しながら、少女の長剣が優雅に弾き、しなやかな身体が、きれのある舞を舞う。
踏み出し、突き、返し、そして……静止。
即興の音楽にあわせ、少女の舞は見事に完成されていた。
急くように忙しく幾つもの音を並べたかと思うと、突如、静に転じる。
ついでなだらかな休息の調べ。
やがて、音楽が鳴り止んでも、人々は、まだしばらくの間、じっと少女の姿を凝視していた。
誰かが思い出したように拍手を始めると、周囲もこぞって手を打ち鳴らし、少女の舞を賞賛した。
「アンコール!」
「アンコール!」
熱気の輪が渦巻いていく中、ヤトは少しばかり辟易した顔を見せていたが、当のルイサスは、微笑んで、観衆に一礼してみせた。
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