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半熟騎士の日記帳
第一章 建国記念祭
 口笛が誰からともなく高く鳴らされる。
 アレイスの騎馬が後足で半ばまで立ち上がり、手綱から片手を離したアレイスを振り落とすかに見えたのだが――そこはそれ、祭りの余興である。アレイスは見事な手綱捌きをみせ、人々を沸かせたのだった。
 やがて、隊列は、中央広場を一周し、王城へと戻っていく。
 その背中を追うように、国家の演奏がゆっくりと消えていくと、中央大通りの南側には、さまざまな種類の移動式屋台が所狭しと立ち並び、街の賑わいは一気に雑然とした様相を見せ始めた。
 人々は祭りの喧騒に酔っているかのように陽気に語り、子供たちは興奮冷めやる暇もなく、あちらこちらの屋台をのぞいては、はしゃいだ声を上げている。
 そこここで、今この時期にしか味わえない、数日間の美味、雪分草のスープが振舞われ、それと一緒に出される果実酒が、人々の心のわだかまりを程よくほぐしていた。
 飲食させる屋台ばかりでなく、通りには見世物小屋の類も並び立つ。
 路傍では、大道芸人の一座が、目の回るようなパフォーマンスで人々を沸かせていた。
「さぁさぁ、さぁ! お立会い!」
 軽快な呼び声とともに、人の輪の中心に躍り出たのは、腰まで届くほどの銀髪を三つ編みにした、美少女である。
 年は十前後。彼女は男勝りな衣装に身を包み、その右手に、騎士の使うような長剣をたずさえていた。

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あきゅろす。
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