半熟騎士の日記帳
第一章 建国記念祭
王国中の都市が建国記念祭で沸き立つ中、ここ、王都・ウィムレシアも例外ではなかった。
いや――例外でない、というどころではない。
王都と呼ばれ、ウィムレシア王家の名を冠されたこの街の熱気は、他のどの都市とも比較にならないほどのものである。
王城から整然と隊列を組んで現れた正装の騎士が、これまた煌びやかな馬具に彩られた精悍な白馬を操る。随伴する甲冑兵も、この日ばかりは兜の面をあけ、煌く剣を太陽にかざす。
王国の栄誉と威信とをその身に引き受ける騎士たちの、それは実に晴れやかな表情――騎士たちは、誰もが、この国を護っていく覚悟と誇りを背負っているのだ。
その中で、何より人々の目を引くのは、やはり、隊列を率いる将の姿である。
隊列の先頭、近衛騎兵隊を率いるは、パースウィル・リオット。
彼を背に乗せ、朝露をかためた銀の鬣を優雅になびかせるのは、イリスの森の奥深く、神域と呼ばれる秘境にしか生息しない『幻の獣』、一角獣(ユニコーン)。細く伸びた額の一本角が、陽の光にきらきらしく輝くと、誰からともなく、ほうっと息が漏れた。
「素敵ねぇ……」
娘たちの陶然とした呟きと視線に見送られて近衛騎兵隊が過ぎると、次には、華美な軽装鎧を身に着けた、近衛隊がいく。
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