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半熟騎士の日記帳
第一章 建国記念祭
 四月七日。
 晴れ渡る空を、一陣の風が吹く。
 高らかな宮廷楽団による国歌の演奏で朝が訪れると、街には一時に人々が溢れ出した。
 歓喜の笑顔に見守られながら、王立騎士団がきらびやかな衣装で中央大通りを埋め尽くすパレードを行う様は、まさに壮観である。
 街中に響き渡る行進曲。
 一年を通して国中で一番初めの、そして最も盛大に行われる祭り――建国記念祭――が幕を開ける。
 建国記念祭とは、かつてこの地に広がっていた大帝国・サラファス帝国がその血塗られた末期、北部大革命により滅亡し、現王家――ウィムレシア家へと統治権が委譲された日を祝う行事である。
 ウィムレシア王立騎士団の結成の日としても知られている。
 とはいえ。
 サラファス帝国の滅亡に立ち会ったものは、すでに今は亡くなり、その子孫たちにとっては、そのような歴史上の出来事など、瑣末ごとに過ぎず、むしろ、北限の地ウィムレシアの長く厳しい冬が終わりを告げ、本格的な春の訪れを感じる――そんな日だという認識のほうが強いかもしれない。
 万年雪に覆われたイリスの森でその年最初の雪解け水が流れ出し、小川となって、真っ白な土を分けて雪分草の新芽が顔をのぞかせるころ――恵みの季節のその始まりに。

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