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白石 蔵ノ介
本気、なんやけど

自意識過剰な君との一週間 03


「んー、うー・・・あー」

「ちょお、名前ちゃん?なんや凄い声でてるで?」

「ぁ、璃子。気にしないで。・・・はぁー」

そうは言ったものの、やっぱり璃子はまだあたしのコトを心配そうに見ている

(そりゃ、そうだよね・・・。いっつもヘラヘラしてるあたしがこんなにしおらしいだなんて)

(気にしないでって言うか、気になるっちゅうの・・・)

「何かあったん?ウチでよければ、相談のんで?」

大体、朝っぱらから隣で溜め息やら唸り声をあげられていては、こちらは気が気じゃない


「・・・男の人は、白い肌の女の人の方がイイよね」

「え、は?何!?いきなりなんやの?」

ですよね−。いきなり何だって言う話だよね、うん


「やっぱ、イイゃ。何でもない」


(いつもニコニコってかヘラヘラ笑っとるのに・・・。ほんま、どないしたんやろか名前ちゃん)


「お、おはよぅさん名前ちゃんに風野」

「おはようさん。てか、もう2限目終わってんケドな」

「しゃあないやろ?寝坊して教室に着くんがギリやっちゅうのに、職員室まで日誌取りに行かなアカンかったんやから。教室着いたらもう1限目のチャイム鳴りおるし」

「そんなん、アンタが寝坊せんかったらええ話やろ。日誌のせいちゃうわ」

「聖書と呼ばれるオレかて人間やから寝坊ぐらいすんねん」

「知らへんわ、そないなコト」

(この人は、あたしのコトどう想っているのだろう?)
何だか知らないけれどいきなりそんなコトが思い浮かんできた

「名前ちゃん?やけに静かやけど、熱でもあるん??」

ぼーっと白石の顔を見ていたら、そんなコトを言われて。そしたら、手が伸びてきて、あたしのおでこに触れた

「な、何すんの!?」

「んー、熱はないみたいやけど。・・・顔紅いで?」

「あ、あたしは至って普通だから!いつも通りに元気だから、ね、璃子?」

同意を求めるようにして璃子の方を振り向けば、何か閃いた時のようなキラキラした瞳であたしのコトを見ていた

アレ?嫌な予感☆

「名前ちゃん!それって、'こい'やで!!」

わぉ!!
いきなり何言い出すのかな、この子!!

白石なんて、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔してんじゃん!
(でもなんだか可愛いかも・・・)

「こい・・・?」

ヤバイっ、このままじゃ、あたし失恋する!!

「あー、そうそう!アレだよ、ホラ、知らない?鯉が滝上ったら龍になる話。何の魚だったっけって話をね、さっきまでしてたんだー・・・」

我ながら、見事な切り返しだな、おい

「や、でも風野がさっき言ってたのとイントネーションおかしない?」

(そこ、突っ込むなや!!)

「や、全然おかしくないよね」

あたしがあわてふためけば、白石の疑いは確信に変わり、じとっとあたしのコトを見てきている

(ファンの子だったら失神してるよね)

「やっぱり今日の名前ちゃん、何か変やわ」

「ゴメンね、いつも変人で!」

「なあ、こ「あ、チャイム鳴んで白石」・・・ん」

(あ、危なかった・・・)


何だか自分の席に着いた白石の後ろ姿が淋しげに見えた

(気のせいだよね・・・?)

あたしがまた一人もやもやしてたら先生が教室に入ってきたのと同時に隣から声がかかった。それはそれはとっても小さな声が

「なぁ、やっぱり名前ちゃんって白石んコト・・・」
・・・

「そうですよ!?ゴメンね、こんなに可愛いげのないあたしが白石に想いよせててっ」

どうせ璃子にあたしが白石のコト好きってバレるのも時間の問題だろう等ともう、今までにない位ポジティブに考えたらどうでもよくなって、ふっきれた

「いや、別に謝らんでも・・・。やっぱりっちゅうか、そうやと思ってん。でも名前ちゃん中々言わへんから、ちゃうのかなって」

「・・・え、じゃあ何。あたしが白石のコト好きってバレてたの・・・」

強がって何も相談しなかったあたしは一体なんなの?

「まあ、そーなるなぁ。んで、名前ちゃん。告らへんの?」

おいおい、『んで、』で切り出すほど簡単な話じゃないでしょ、それ

「何言ってんの璃子ちゃんよ。あたし、白石に不釣り合いって分かってるから・・・。それに、今のままでいいンだよ、きっと。それであたしが彼の隣にいられるなら・・・」

狡いかもしれないケド、叶わない告白をして貴方と離れるんだったら友達のままでイイからこのまま貴方の隣にいたい


ボソッと一人呟いた想いは、窓から入ってきた風に揺られる

「名前ちゃん・・・」

思い詰めたような声

「なーんて。そんな綺麗事言える程大人なんかじゃないの。だって、彼が女子と楽しそうに話してるのだって、嫌なの、あの優しい笑顔だってあたしのものって思いたい。ホントはね、ずっと傍にいてほしいって思ってる、今以上に」

それでもやっぱり、他の子と楽しげに話していれば嫉妬しちゃうの
あたしだって女の子だから

「・・・」

先生が黒板に文字を書き込んでゆく

「はーあ。何で白石なんかに恋しちゃったんだろ。無謀にも程があるっての・・・」

全く、神様はどこまでお茶目なんだか
あたしに白石を逢わせるなんて


てか、ノートとんなきゃ

* * * *

名前ちゃんがこないになる程、白石のコトが好きだったのは正直、ビックリやわ・・・

こんな純粋な子今時他におるんやろうか

白石はよく名前ちゃんにちょっかいだしとるケド。アイツが名前ちゃんのコト何とも想っとらんなんて言うた日には、ウチは血祭りあげんで


とにかくウチが出来ることは協力せなアカンなぁ
あれだけ話聞いてしもうたし

手始めにあれやな、白石に直接聞くか・・・
素直に答えるかはビミョーやけど


せや、今はとりあえずノートとらな


* - * - * - * - *

「相変わらず、数A意味わかんない・・・。あー、テストどうしよう!!」

なんだかんだで4時限目までのりきった

さて、ウチは白石でも呼び出すか・・・

「?璃子お昼食べないの??」
颯爽にお弁当を机に置いている名前ちゃんはウチが席を立ったから不思議そうな顔しとる

「ちょお、今から先生とこ行かなアカンねん。すぐ戻ってくるさかい、待っとって?」

「んー、りょーかい」


じゃ、行ってくるわ
そう言って教室を出て向かった先は水道

(やっぱりおったわ白石)

お目当ての人物といえば、忍足と二人で手を洗ってる

「白石、ちょっとええ?」

あ、なんやほんまに呼び出ししとるみたいやわ・・・

ウチが白石のコトを呼べば物凄く嫌な顔して振り返りおった

(名前ちゃんに名前呼ばれた時はこないな顔せえへんのに。解りやすいやっちゃな)

「悪かったなぁ、名前ちゃんやのうてウチで」

鼻で笑って言ってやった

「なんやねん風野・・・」

「話したいコトあんねんケド」

「話ならココでええやろ?」

「あかんねん。とりあえずウチも早う終わらせたいから着いてき」

「・・・」

ウチが歩きだしたら白石も渋々ついてきた

そうしたら今まで黙っとった忍足が口を開けた

「白石!購買は!?」

「謙也に任せるわ。オレのも適当に何個か買っといてや」

「おん」

「あぁ、後−−−」

「?なんや、聞こえへん」

「何でもないわ。じゃ頼んだで謙也」


『名前ちゃんに悪い虫つかへんように一緒にいたって』か
ほんまに白石は喰えへん男やな

暫く歩いてついたのは、廊下のつきあたり


誰もおらんし、ここら辺でええか

ウチが止まると、後ろから不機嫌そうな声

「こないな所まで連れだし「白石、アンタは名前ちゃんのコト、どう想っとんの?」・・・」

一瞬だけ面食らった様な顔をしたものの、すぐになんや勝ち誇ったような笑顔でさらりと一言

「好き」

コイツには羞恥心というもんないんやろうか
自分で聞いておいてアレだけど・・・

「それは、遊びやないんやろう?」

そう聞けば、少しだけ悲しげな表情になる

「遊びちゃうわ」


本気、なんやけど


(なんや気付いてないみたいやねん) (今はアンタに同情するわ・・・) (まあ、いずれはオレのもんになるんやけど) (自分、恥ずかしいやっちゃな) (おおきに) (褒めてへんけど。さて、はよ教室戻らな悪い虫ついてまうな) (せやな)

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