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アカに染まれ。
私立黒澤学園高等部





あー、あー。こちら晴天。



ごほんっ。



只今黒澤学園につきました。


ついたはいいけど…。



えーっと、今見ているのは幻でしょうか。



某魔法使い映画に出てくるお城のような学園に、デカい温室、そして真っ赤な薔薇がたくさん植えられている広い庭。




え、ファンタジー?




俺が目を見張ってきょろきょろしていると、どこかでくすりと笑う声がした。




突然のことに、ぴたりと凍り付く。



ガサッと音がして目の前に人が落ちてきた。



「わっ!」

「黒澤学園へようこそー!篠崎 朱莉!」



落ちてきたのは緑色の奇抜な頭をした美形(男)。


人が木から落ちてくるなんて生まれて初めての出来事に頭がついていかないが、なんとか浮かんだ疑問を口にする。



「な、なんで俺の名前…。」


そう問えば、くすりと笑われた。


「ドキドキワクワクうわさのてんこーせー、だからー。あー、でも平凡君だねぇ、君ー。」


語尾をのばした色気のある甘ったるい声で囁かれる。


うわぁ、俺が女の子なら確実に惚れてるよ。




そして腰砕けになるから耳元で話すのはやめてくれ。


っていうかこの人何気に失礼な事言わなかった?



「おーい、平凡くーん?」



目の前で手を振られ、はっと我にかえる。


「どうしたのー?あ、もしかしてー、俺に惚れちゃったー?」


にやにやと笑う緑の男に、慌てて首をぶんぶんと横に振った。


「いやいやいや!俺、ノンケですから!女の子が好きなんで。」



全力で否定すると、緑の彼は頬を膨らませた。



「なにもそんなに否定しなくてもいーじゃん。ひーどーいー。俺のガラスのハートがぶろーくんしちゃったよー。」


くねくねと体をうねらせる彼は、はっきりいってキモくて凄く残念だ(いろんな意味で)。こんなにイケメンなのに。



はぁ、とため息をつく。



瞬間、頬に柔らかいものがあたる感触と、耳元でちゅっという可愛い音がした。



ん?ちゅ?



「じゃあ俺そろそろ行くねー。天敵がこっちに来るみたいだからー。あ、朱莉のほっぺって柔らかいねー。ごちそうさまー。」


ゆるゆるな笑みを浮かべてそう言うと、彼は俺が歩いてきた道を颯爽と歩き去っていった。






「や、やっぱりほっぺにちゅーされた…。」




っていうか結局あれは誰だったんだ?




[未来へ#]

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