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平穏無事とは程遠い!
怪我してるのに本気ですか・・・?




あれからなんだかよく分からないけど、今お医者さんのいるマンション(これマンションって言葉だけで片付けて良いの?)にいます。

そしてこれまたよく分からないんですが金髪バーテン服の人が手当てを受けているのを呆然と見ている私。



ここって本当に医者なんですか・・・?怪しい。




時間を少々遡ること小一時間。

なぜ病院にいないのかと言うと、慌てて駆け寄り混乱した頭で必死に救急車を呼ぼうとしていた私に、金髪バーテン服の今(本当に怪しいけど)治療受けてるそのお兄さんが止めたからだ。「救急車は呼ぶな」と言われた時は、でも足を引き摺ってるのに何で?とクエスチョンマークが頭を飛び回ってたけどその言葉の後に続けた話で理解した。


この近くに知り合いの医者がいる、そこまで少し手を貸してくれ。と言われた。

こちらとしては断る理由もないし、車に跳ねられて足を引き摺っている人を無視するなんて事考えられないのでテンパる頭ながらも必死に支えて歩いた。


そして着いたのがここという訳なのです。
人生、本当何があるか分かりません。




―コト

『え・・・?』


目の前に何かを置く音がして意識を戻せば私の前にオレンジジュースが置かれていた。
すっと視線を上げると黒いスーツに黄色と青のヘルメットをつけた人が立っていた。あれ・・・?この人この間・・・


『あ、ああ・・・あ、こ、この間のライダーさん・・・!』

えっと、お名前は・・・
困ったように口をぱくぱくさせる私の言いたい事が分かったのかライダーさんは何かを取り出して素早い指さばきでパネルをタタタっと叩く。



【セルティ・ストゥルルソン。セルティと呼んでくれ。】


せ、セルティさん!って言うんだ・・・。まさか外国の方だったなんて知らなかったよ。
まさかあの時助けてくれたライダーさん、もといセルティさんがこんなところにいるなんて思いもしなかった。




「あんまり無茶しないようにね」

「あぁ、悪ぃ・・・」



今日の私の驚き所は沢山だ。人が車に跳ねられだ場面に居合わす→車に跳ねられたにも関わらず立ち上がる人がいたこと→知り合いのお医者さんとやらの高級マンション→つい先日困っていた所を助けてくれたライダーさんとの再会。


あー平穏じゃない。これ全然非、日常だ・・・。


セルティさんが出してくれたオレンジジュースを少し口に含み飲み込んだ。冷たい。驚いて気が動転していた身体を冷やしてくれるような心地よい冷たさだ。次第に少しずつだけれど心が落ち着きを取り戻してきた気がする。


ところで何でオレンジジュースなんだろう。好きなのかな?小さな疑問が浮かんできたころ奥から玄関で出迎えてくれたメガネのお医者さん?がこちらに来た。バーテン服のお兄さんも一緒に。


するとそれに反応したセルティさん。すかさずさっきのPDAをどこからかさっと取り出し、馴れた手付きで文字を打っている



【静雄は大丈夫なのか?】


「大丈夫大丈夫!二日もすれば元通り」


セルティさんがなにを打ったのかは分からないけれど肩を竦めて笑うお医者さん?の反応で何を聞いたのかは大体の返事でわかった。



「それにしてもどうしたのこんな怪我、って一人しかいないか」

「あんのノミ虫野郎・・・・・・!!!!今度会ったら絶対に殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」



・・・こ、こわっ!!!!
お兄さん、そのノミ虫野郎って人に一体何されたんですか?!


『はわわわわっ!セルティさん!何だか物騒な言葉が連続で聞こえるんですが・・・っ』

【アイツが関わるといつものことだ(苦笑)】


に、苦笑い!?この状況を苦笑いで流せるなんて!


「それよりさ、静雄。あのコ知り合い?」

「あ゙ぁ゙?」

『ひぇっ』


バーテン服のお兄さんのあまりの恐さに思わず小さな悲鳴が漏れた。お医者さんが、静雄、怖がってる。怖がってるから。と宥めるように注意すれば、バーテン服のお兄さんは、あ、あぁ。と全身の力が抜けたようにシュルシュルと元に戻った。


「いや、偶々近くにいた奴で、手伝わせちまったんだ。・・・悪ぃな。」


申し訳なさそうに謝られて。『い、いえ!良かったですっ』咄嗟に出た言葉がこれだ。これじゃあ、何が言いたかったんだ自分。
怪我が早く直るようで良かったのか、交通事故が間近で見られたから良かったのか、答えは前者ですが・・・。


バーテン服のお兄さんの目をそらして頭を掻く仕草は何だかさっきの恐い印象は丸でなく、ちょっとだけ可愛いと思ってしまった。嬉しくないですよね、ごめんなさい。




それから少し話をして、お医者さんとバーテン服のお兄さんの名前を教えてもらった。お医者さんの名前は岸谷新羅さんでバーテン服のお兄さんは平和島静雄さんというらしい。勿論、自分の名前も言うことに。本当、最近おかしな事ばかりだ・・・



「うわぁ!もうこんな時間じゃないか!」


お医者さんが時計をみて慌て始めた。自分もそれに釣られて時計を見た。



『あれ?』


時計が差す時間は0時、つまり真夜中。ば、晩御飯食べ損ねた!!ていうか明日朝一から学校っ!!急いで帰らねば!



『あ、あの!私そろそろ失礼しますっ!』


わたわたと焦っていた私に平和島さんが立ち上がった。平和島さんも帰るのだろうか、でもふと頭に疑問が・・・。車に跳ねられた直後でいくら手当してもらったといえ、足怪我してるのに帰るの?と考えていたら平和島さんの手がぽふっと私の頭に乗っていた。


あ、頭撫でられた・・・。
と気付いたのはそれをされて数秒後。まさか子ども扱いじゃあ・・・



「送ってく」

『・・・!めめ滅相もございません!!』


どこの時代に車に跳ねられた人を家まで送らせる鬼畜人がいるんですかぁ?!



「あぁ、そうだね。夜道は危ないし」

『えぇえええっ?!』


おかしい!今の発言医者としておかしいですよ岸谷さん!!



【流衣ちゃんは私が送ろうと思っていたのに、残念だな】


「セルティだって危ないからダメだよぉぉ!!」

【何を今更】


「夜道での女の子の二人歩きは危ないってぇ!!」

【私はバイクだ】



こんな感じで岸谷さんとセルティさんの延々と続くやり取りが繰り広げられている。そんな中、スタスタと平和島さんは玄関の方へ歩いていく。

ちょ、ちょっと待ってください!!と慌てて引き留めようとしたら岸谷さんとセルティさんがゆるゆると手を振っていた。こちらが振り返すと岸谷さんが「気を付けて!」と笑った。何となくだけどセルティさんが拗ねているような気がした。その証拠に、岸谷さんの足を思いっきり踏んづけていたのを見てしまった。


玄関に向かうと靴を履いて待っている平和島さんがいた。ま、まさか本当に送ろうとしてるんじゃあ・・・。歩き回ったりして、怪我・・・大丈夫なのだろうか・・・。


ホラ、送っから靴履け。とだけ口を開いた平和島さんにすみません!と謝ってから靴を履く。





やっぱ本気で送る気だ・・・この人。









これじゃあどっちが病人なんだか分からないよ・・・。
ん?どうした?
い、いえ!なんでも!

静雄が送る気満々だし残念だったねセルティ。
新羅のバカ野郎!お前が仕組んだくせに、30発殴らせろ!




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