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短編集
教師見習いも一苦労U
「それで?お前はどうしたいんだ?」
同じ大学の友達にこのことを話した。家庭教師のバイトのことは知っているから説明は楽だ。とても生意気な教え子がいると。しかし、山崎太一(やまざきたいち)はよく分からない質問をする。
「どうしたいって?」
「話によると生意気な女子高生なんだろ?調教でもするか?」
「ゲホっ…ゴホッ!?」
むせた。学食で昼飯を食ってる最中だったんだが、ちょうど水を飲んでるときにとんでもない単語を聞いた。
「大丈夫か秀彰」
「…ハァ…死ぬかと思った。お前が変なこと言うからだろ?」
「変か?まぁ確かに白昼学食で言うべきはないか。だがいいぞ。段々従順になっていくあの様は」
駄目だこいつ…。頭はいいくせに何処か変態の素質がある。愚痴る相手を間違えたようだ。

「別に…どうしようとか思ってない。ただこのままだときっと落ちるだろうからな」
「へ〜?バイトの教え子にしてはえらくご執心だねぇ」
と、ニヤニヤ薄気味悪く笑い始めた。とはいえ、妙にこいつにその笑いがマッチしてるから不思議だ。この変態め。
「ま、いいけどさ。頑張ってるならその方がいい。怠慢よりいい決まってる」
「結局答えはそれだけか?」
「そうだな。よし俺にまかせろ。説教してやる」
はぁ?何故そうなるんだ?お前は興味本位に見てみたいだけじゃないだろうな。
「はっはっは…。そんなわけないだろ」
と、勢いよく水を飲み干す。
嫌な予感はしたがまぁいい。改善できる可能性なら越したことはない。
「ま、別にいいけどな」
「で?何時のどこで集まる?」
「…まさか今日のつもりか?」
すると何を言ってるんだという顔された。いやいやいや、お前の変態じみた行動力にはいつも驚かされるな。
「だいたい集合って、ただの家庭教師の俺が呼べるわけないだろ」
根本からして無理な話である。が、この変態はよりによってこんなことを言いやがった。
「そうか?お前がそう言うなら仕方ない。俺が訪問しよう。だから家を教えろ」
本日二回目吹いた。
「いや…人選ミスだ。まさかそうくるとは思わなかった。お前に会わすわけにはいかない」
きっぱり断る。本人たちの了承なしに他人の家を教えるのはどうかと思うし、山崎に教えるわけにはいかないと確信した。
「わかったよ。じゃあこの話は終わりだ。次は俺の話を聞いてくれ」
珍しく素直に引っ込んだ。いつもならつっかかってくるから、よっぽど聞いてほしいことがあるのだろう。もしかしたら、真剣な相談事かと思案する。
「あぁ…」
「縄ってどうやって縛るんだ?」
「……んなもん知るか!」

山崎と話して数日経った頃。ますます美姫の扱いにくさに頭を悩ませていた。
「ねぇ…」
やっとこさ机に向かわせた美姫が呼ぶ。集中力がなくなったのか、分からないところがあったのか。
「どした?」
「昨日なんか変な奴に会ったんだけど」
「へ〜。そりゃ大変だったな」
面倒だし、会話になっては勉強にならない。冷たくあしらう。
「秀彰の友達だったんじゃない?」
は?何言ってんだ。俺に変な友達など………あ〜、いるな。確かにあいつは変な奴だ。
「いや、いないぞ。そんなやつ」
しかしそれを認めるのは何となく悔しいので否定しておく。
「いきなり家に来て、私を呼んで、意味分かんないこと言って帰った」
「何言われたんだ?」

「ワタシアヤシイモノジャナイネ。ナマエハトリアエズタイチとイウ。ア、ケッシテ、ホウジョウヒデアキハムカンケイダ……」
おい。何で直接顔を合わせてんのに、変声機使ってんだ。怪しすぎるだろ。しかもわざわざ俺の名前を出すとかアホか、あいつは。

「フホホ、サイキンキサマハナマイキラシイノデ、ワタシガキョウセイシテヤロ……ギャン!」

おいどうした。死んだか。

「変な奴だから靴でしばいた。そしたら帰った」
何しに来たんだあいつは。
「ところでどんな格好してたんだ?」
「長いコート着て、サングラスかけて、つけ髭生やして、カツラかぶって、顔はわからない」
めちゃめちゃ変装だってバレてんな。てかよく玄関まで上がれたもんだ。あ〜でもあのお母さんなら有り得るかもしれない。マイペースというか、天然というか。

「はっきり言って迷惑だから」
「もしそんな奴がいたら、俺が説教しておいてやるよ」
俺は最後まで認めず、勉強に移行させた。

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