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短編集
正義のミカタ]U
「どうしたんですか」

 何かあったのか。私はすぐさま通信機器で確認を取る。

「桜ちゃん! 早く逃げるんだ。デカいのが来るぞ!」

 急いでカメラで探す。三百六十度見渡せるシステムが役に立った。備えあれば憂いなしと、昔お婆ちゃんに教えてもらった言葉を思い出す。でも、すぐにそんな安堵した気持ちは吹き飛んでしまう。カメラの一角に映し出された映像。そこには、ネオンが乗っているであろう特別大きな戦艦が、特大の砲撃でエネルギーの充填を行っていた。

「やばっ!」
「しかも既にほとんど準備出来てやがるな」

 ロードも気付いたらしく、さすがに焦りを言葉に含む。

「あはははは! これで詰みですわ」
「桜! 何かに掴まってろよ!」
「何かって何も……きゃあっ!?」

 今までほとんど衝撃がなかったが、この時ばかりは体が機体に取られてしまう。シートベルトをしているとはいえ、凄い衝撃だ。煽られるなかで確認出来たのは、思いっ切り高度を変えて照準から狙いを外させていることだけだ。

「くっそ!」

 珍しく焦るロード。このままだと逃げられないのかと思う。こんなところで死ぬは嫌だったけど、そんな窮地だというのに、何も出来ないでいる自分が何より嫌になる。

「こっちも最大出力だっ!」

 空中戦のなか、緑の機体がレーザーを射出していた。幸樹さんだと分かる。その狙いは、今まさに私たちに攻撃を仕掛けようとするネオンの戦艦である。でも、どうみても撃ち落とすには出力が足りないと思われた。

「あはは、そんな攻撃無意味よ。まずはあのピンクからよ」
「ラジャー」
「いいや。狙い通りだ」

 既に緑色に光るレーザーは巨大戦艦の発射口を狙う。破壊には至らないけど、攻撃の衝撃で発射口の狙いが外れる。その方向先も計算済みだったのか。大きく斜め上に押し上げられた。
 その瞬間に砲撃は空に向かって撃ち出される形になる。幸樹さんのファインプレイだった。

「く……、小癪な真似を……。早くあの緑も撃ち落としなさい」
「悪いな。これでもう倒しちまったぞ」

 ネオンが出した指令を聞く者はいなかった。既にあれだけいた敵船は撃墜され、最後の一機も優斗さんによって撃ち落とされる。

「よし。よくやった」

 ロードが二人に賛辞を送るが、機体の周波数をようやくキャッチしたのか、優斗さんと幸樹さんが怒っているところが画面に表示された。

「何がよくやっただ。お前敵だろうが。リーダー面すんじゃねぇ」
「そうだな。大体しれっと桜ちゃんの機体に乗ってるのも気に食わん」
「ごちゃごちゃうるせえ! 俺の作戦通りなんだよ。褒めてやってんだから有難く聞いとけ」

 互いに映し出されたモニター上で、三人はギャアギャアと言い争いを始めてしまう。ただでさえ大声だというのに、マイクによってさらに音量が上げられていた。

「あの……」

 私が止めようと声を掛けるけど、三人は気付くことなく論争を続ける。そんなことしてる場合じゃないのに。まだネオンが残ってる。街もこんなめちゃくちゃにされてるのに。何でこんな、バカな言い合いを……。


「うるさーい!ケンカするなー!」
「っ……」

 三人はピタリと動きを止める。優斗さんも幸樹さんは驚いた顔をしていた。ロードに至っては間近で叫ばれたこともあり、ちょっと体が引いてたくらいだけど、この際どうでもいい。

「ケンカしてる暇なんてないですよね。まだネオンだって残ってるのに」
「お、おう」
「そ、そうだな」
「まぁ桜ちゃんが正しいな」
「そうですわ。私を無視しないでくださいませ。お兄様」

 皆がたじろぎながらもうむうむと同意する。その時、モニターに新たに映し出されたのはネオンと思しき女の子だった。銀髪のロングで黒いゴスロリの服を着ている。右眼が蒼く、左眼が朱い。両目で瞳の色が違っていた。

「無視するなっつったって。お前にはもう戦力がないだろ」
「な、何を。まだこのブラックローズスパイラル号がありますわ」

 ロードの指摘に、妹のネオンは奮起する。どうやらネーミングセンスのなさは血筋のようだ。けれど呆れたのも束の間、ネオンの言うブラックローズ何とかは、何と変形を始めたのである。

「な、何だ?」

 優斗さんが驚くのも無理はない。あまりの高速変形で目で追えなかったけど、何と大きな空飛ぶ戦艦は、五つに分裂したのだ。それぞれが私たちと同じように飛行艇の形で飛び回る。敵がまた一気に増えてしまった。

「お〜ほっほ。さぁ、これで私の勝利は揺るぎませんわ」
「ネオン様バンザ〜イ」

 それぞれ全く形も大きさも違う機体だけど、どれかにネオンが乗っていて、あとは毎度お馴染みの手下たちが操縦しているようだ。

「むしろ小さくなって倒しやすくなったっての」

 幸樹さんが先手を打って攻撃を仕掛ける。巧みな操縦と射撃は、確実に敵の一機を捉える。放たれた光線は見事に命中した。でも、さっきまでと違い、生じた煙の中から敵の機体は無事に飛行を続けていた。

「なっ……?」
「今更そんな攻撃。ビクッ、ともしませんわ」
「あいつ。また何か仕掛けやがったな」

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あきゅろす。
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