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「そ、そんなに嫌いだったんですか…?」

「そういう問題じゃねえ!あいつはな!俺に付きまとうだけじゃ飽き足らず、俺が可愛がってた女の子まで横取りしやがったんだ!しかも一度ならず二度も三度も四度も…」

「横取りって…」



未だに腹を立てているのかキーッっと地団太を踏む凌を見て、敬大は苦笑いを浮かべた。


それはたまたまその子達が彼に惚れてしまっただけなんじゃ…?





「でも彼、女の子に生まれ変わってたんですね。すごく綺麗な子でしたけど。」


とにかくなんとか凌を落ち着かせようと、敬大は彼の根本的な部分を突いてみる。
女好きな凌のことだ、のってこないはずがない。

案の定、凌の手は敬大の襟から離れた。


「そうだな。どこからどう見ても育ちの良いお嬢様。知性的で落ち着いた美少女、ってところか。だが…」


「?」


「俺にはユリウスにしか見えん」




あまりに真剣な顔で言うので、敬大は信じられないとばかりに目を見開いた。



「本気ですか?あの、女の子なら見境のない凌さんが」

「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえ!」

「いやだって芹沢…ていうかロレイウスに手を出すのは平気だったじゃないですか」

「それとこれとは別だ。芹沢は芹沢。可愛いからいい。しかしあの葵はどう見たって男にしか見えない。いやかわいいのは認めよう。だが常にあの女の前にはユリウスの幻影が立ちはだかってんだ。近寄るのすら抵抗がある」



凌はぐっと拳を握りしめ、何気にけっこう酷い事を熱く語っている。



「…まあ、気持ちはわからなくもないですけどね。俺も裕真がセレナに見えてしょうがないですから」

「言っておくが、お前に裕真はやらんからな!」

「そんなこと言ったって…」



自分が男に生まれ変われば相手も丁度女に生まれ変わっていたなんて、俺からすればものすごく羨ましい話なのにと敬大は涙まじりのため息をつくのだった。




「でも凌さん女の子は好きでしょう?その人が嫌だったのは男だったからで、自分に好意を持っていた人が女の子になってたら嬉しいんじゃ…」

「………」

「凌さん?」


凌は考え込むように急に黙ってしまう。

不思議に思ってその顔を覗き込むが、



「ぶっ!?」


「やめだ、やめ。俺もそろそろ仕事に戻らないとな。お前もさっさと帰れ」


気遣ってくれていた敬大の顔を容赦なく押し返し、手の平を返してあっさりそう言い放つと、凌は上着から取り出した煙草を銜えて立ち去ろうとした。


が、何か思い出したのかふと立ち止まり、振り返った。



「そうだ、お前裕真にあいつを近づけさせるなよ」

「え?」

「裕真が口説かれたりしたら困るだろうが」

「……ありえないと思いますけど…」




呆れる敬大を残し、こんどこそ彼はその場を立ち去った。





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