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「はい?」
「敬語ぐらい使えんだろ。年上にタメで喋んなよ常識ねえな」
そうひそひそと耳打ちしてくる。
悪いけどその言葉そっくりあんたに返してやりたい。
まさかこいつに常識を問われるなんて…ってか年上って誰のことよ?
「でも驚いたな、お前ら知り合いか?」
「ええ、クラスメイトです」
色黒スキンな人の質問にも柳生はとても丁寧な口調で返事を返す…と何故かそこへ素っ頓狂な声があがった。
「クラスメイト!?」
「柳生先輩と…誰がっスか!?」
リンゴとワカメだ。
なんでそこに驚く。
「あたしだけど」
自分を指差すと同時に二人が信じられないって顔をした。
え…ちょっと何この空気。まさかとは思うけど…
「いやだって、あんた二年じゃ…」
いや。いやいやいやいや
「違うから」
言った瞬間、切原と赤いやつの顎が今にも外れそうなぐらい落ちた。
ちょっと、ウソでしょ!?
「あんた達これが見えてないの!?」
ブレザーに縫い付けられている校章を引っ張って見せつけてやる。
開きっぱなしの口を塞がないまま、切原はあたしの校章と自分のそれとを見比べる。
学年ごとに色の違う校章。二年の切原は青、三年のあたしは緑色だ。
「…マジ…?」
それはこっちの台詞だ。
信じられない。まさか二年と間違われてたなんて。
まさにあんぐりといった状態でしばし固まったかと思うと、切原はギギ…とどっかのホラー映画よろしく仁王の方へ頭を向けた。
「俺は二年とは言うとらんぜよ」
しれっとした顔の仁王に容赦なく突き落とされたらしい切原の肩を誰かが忙しなく叩く。
「バカっ気にすんのはそこじゃねえだろぃ!柳生と一緒ってことは真田とも同じクラスってことだぜ!?」
何でここで真田?とか思ってるあたしの横で、もはや悲鳴にならない悲鳴をあげて切原が頭を抱えた。
ははは、まるで数日前の自分を見てるみたいだ。
とか心の中で笑ってる場合じゃない。あたし全然話についていけてないんですけど。
完璧に置いてけぼりをくっているあたし。それでも説明してあげようって親切な人はいないらしい。全員が神妙な顔をして何やら相談し始めた。
しかしこうして並べると見事なまでの異次元っぷり。
全員中の上以上。噂に違わぬ美形揃い。なんだこの整ったやつらは。壮観だ…。
絵里子がいたら大騒ぎすること間違いない。いや、下手したら鼻血出して失神するかも。
そりゃファンクラブもできるよねこんなの。ホントに同じ生物か不安になってくるもん。
「おい、やばいんじゃないのか?真田と同じクラスなら高確率で、」
「そうですね…しかし彼女にはそんなに面識はなかったと思いますが」
生真面目さが滲む仕草で柳生が眼鏡を押し上げる。
「別のやつ探し直した方がいいんじゃねーの?もっと可愛いやつ連れてこいよ赤也」
「できたらとっくにやってますって…」
「けどあんまり話を広げ過ぎると相手に気付かれるぜよ」
「しかも以外にこういうタイプって探すの難しいんスよね」
「何せ目立たんからのう」
何だかあたしの話なのは分かる。でもって軽く馬鹿にされてるっぽいのもわかる。
とりあえずあたしは何やら問題だらけらしい。
ってことはこれもしかして開放される!?それなら喜んで辞退したい!帰りたい!
嬉々として挙手しようとしたその時だった。
「っあー!ならもういいだろぃ真田ぐらいなんとかしてやるって!ジャッカルが!」
「俺かよ!」
何だかよく分からない発言に、意を決した様子で切原が振り向いた。追って全員の視線が一気に押し寄せる。
ここしかない。この機を逃すな栗原茜!
「…いや、もうほんと勘弁してください。あたし降りる、なんかまずいみたいだし」
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