FANCY
Re:Re:
「私ね、杏のこと……その、好き……なんだ。だからえと……」
僕はそこで止めたんだ。
『付き合って下さい』
僕から言った。
結音は目を丸くして、その後顔を真っ赤にしたんだった。
それで小さく頷いて、涙を流しはじめた。
僕はオロオロしてしまって、
『な、なんで泣くんだよ』
と問う。
「杏がいいとこ取っちゃったんだもん」
嗚呼、なんて可愛いんだろう。
素で思った。
『泣くなよ』
なんて言って、涙を拭いてやったら、結音はいきなり抱き着いてきた。
声を上げて泣く結音の頭を優しく撫でて少し笑った。
「もう杏の馬鹿ッ!!いいとこ取って!!気障にも程があるよ」
狙ったわけじゃなかったけど、まぁおいしいとこを取ったのは事実で。
僕も照れて笑い、恋人となったのだ。
だけど、夢で紡がれた言葉はそれとは違った。
「杏……あのね、えと、ゴメン!!」
えっ?という声が出なかった。
「ホントにごめんなさい……ごめんなさい」
目の前で泣きじゃくる結音は、僕が抱きしめる前に避けた。
[*前へ][次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!