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FANCY
Forever Song


――彼が。
彼が隣を歩いているなんて。
みんなから人気の男子。
彼しか知らない私の秘密。
私しか知らない――であろう――彼の秘密。
そして私だけ――だった私達――の楽園。
近付く度に、2人分の重さが床を歪ませ、狂ったように奏でる。

「――なぁ」

不意に聞こえたその声は、頭の上から降ってきて。
見上げると見えるのは薄暗い天井と彼の顔。
わざと視線を交えず、伏し目がちに。

「――何?」

「あの曲。いつも歌ってる曲。なんて曲?」

あぁ。私の好きな曲。

「――……Forever Song……」

「誰の?」

あんまり知られてないと思うけど。

「……Vlidge」

「ピアノ曲?」

私は黙って頭を振った。

「普通の。私が勝手にピアノで弾いてるだけ。原曲、あるけど……?」

「聴きたい」

間髪のない返答。
私は興味津々の彼を見て、少し笑えた。
そうやって話している内に、私の楽園に着く。
私はまっすぐピアノに向かって。
2人は座れる黒い椅子に腰掛け、ケータイを取り出した。
不意椅子が沈んで、右側が暖かくなった。

「何?」

ポカンとする私に問う彼は、まるで当然のように腰掛けている。

「別に……」



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あきゅろす。
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