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FANCY
Forever Song


仕方なく席を立って教室を出た。
トイレの個室でケータイを開く。
〈Eメール1件〉の文字。

〈おはよう。今日も来るよな?〉

〈行くに決まってるでしょ。あそこは私の楽園なの〉

迷わず送信。

あまり待たずに返ってきた。

〈俺のでもあるけどな〉

〈私だけ〉

〈独占欲?〉

〈違います。元々私が見つけたんです。それを勝手に君が来ただけ〉

送ったところでチャイムが鳴った。



いつもの放課後は1人だった。
晴れても、雨音が歌っていても、私は図書室で読む。
この部屋からは、校門がよく見える。
グラウンドを挟んだ向こう側――。
野球部やサッカー部の声が聞こえる。

――ガラッ

急に耳に入った音の元を探す。

「行かねぇの?」

優しさが少し見える、彼の声。
教室がカラになったのだろう。でも――

「カラオケに誘われてたんじゃ……」

私が素直に問うと、彼はカラカラと笑った。

「うん。まぁ……怠いし?」

なぜ疑問形なのか。
『怠い』の一言で終わらせてしまうことだったの?
音楽室にいる方が怠いと思うけど。

「……行く」

私は小さく呟いて、鞄を持った。
図書室は常に開いているから鍵もいらない。



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あきゅろす。
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