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FANCY
Forever Song


みんなから慕われる彼。
読み方は違うけど同じ名前の彼。
同じなのは名前だけ。
あとはすべて正反対。
あの透き通る声は、みんな知らない、私だけの秘密。多分。

――っ!!

目が合ってしまった。
すぐに逸らす。

――しまった。

すぐに後悔した。
変に思わなかっただろうか……。

「――中倉」

彼の声。
私を呼んでいると解りながら、あえて気付かないフリ。
彼は彼自身の名前を声に出したのだ。

「――中倉 奏(カナデ)」

フルネーム。
これは気付く大きさ。
目線だけ上げて、彼を見る。

「……なにか?」

「それ、なんて本?」

なんでそんなことを――。

「……ゲーム……館」

「へ?」

「殺戮ゲームの館……」

「へぇ。ホラーかな。誰の?」

彼は関心を持ったようで、どんどん近づいてくる。

「……ホラーミステリー。土橋……さん」

「好きなの?」

黙って頷く。

「……昨日の元気はドコに?」

小声の囁き。
30cmもない距離。

「……なにか?」
無視して問う。

「……メール見てよ」

「ソゥ?」

急に入った別の声。

「あぁ。今行く」

彼は踵を返して遠ざかった。
ほっと胸を撫で下ろす。

――『メール見てよ』

彼の声が、耳をくすぐる。



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あきゅろす。
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