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FANCY
旧校舎の幽霊


「勿論。私の楽園。誰にも渡さない」

「これからは俺のでもある」

彼も含み笑いを返した。
その後、彼は私の手を取り、音楽室の中に連れ込んだ。

「――歌って」

彼の伴奏は、まるで心地の良い風が流れるように、でも身体の中を荒らしていくような、そんな荒々しささえ覚えた。
私はその音に『見とれていた』。
歌うことさえ忘れてしまいそうだった。
我に返った私が息を吸うと共に、彼は私の声の下に――私の『音』を荒らさないように、優しく、優しく『語り』始めた。

勿論、先生以外この学校にはいない。
先生でさえ、新校舎の向こう側だ。

誰一人、この『物語』を聴いてはいない――――。



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